リアムはその言葉に絶句した。色々な女性を泊めてはいないがナタリアを何度か泊めたのは事実なので、反論はできなかった。

結局由里の自宅に二人は帰ってきた。

狭い由里の部屋のベッドでそれでも二人は幸せに浸りながら抱き合った。

次の日の朝早くに迎えに来てもらって、リアムは一度ペントハウスによって着替えて会社に行った。

そしてリアムはその日一日考えていた。

由里をペントハウスに住まわせるには、大規模な改装が必要だという結論に達した。

これも自身の過去の行いのせいなのでどんなにお金がかかってもすぐに実行したかった。

でも結局クリスマス休暇明けからリアムは今佳境を迎えている東京のホテルの買収に向けて、再度東京まで出張になったりで由里としっかり話す時間が取れなかった。

リアムはホテルのIT関係を裕司に依頼する為、彼と話を詰めている。

由里は東京にいるリアムを羨ましいと思ったが、由里も忙しく日本とは昼夜逆転の時差なのでなかなか電話もできず、由里はナタリアにいわれたことを何度も何度も考える羽目になった。

由里はこの頃また悪夢を見て、夜中に悲鳴を上げて目が覚めることが多くなってきた。

ナタリアが折に触れ由里に接触してきて、社会的にも女としてもレベルが違うことを見せつけてくるのだ。

事務所に突然現れて

「リアムの彼女がこんな小さな事務所で人に媚び諂らって仕事をもらってるなんて、私たちの間では笑いものなっているわよ。それなのにいつまでも彼に縋りついていて恥ずかしくないの身の程を知りなさいよ」

と言われたときもある。

ミッシェルや新しく来てもらっているパートの真理子は、びっくりして言葉もないようだった。

ミッシェルはナタリアが帰った後キッチンからソルトの瓶をもってきて、無言でドアの外に振りまいた。

日本ではこんな時塩をまくのだと前に嫌な客が来た時に教えたことがあり、覚えていたのだろう。

それがおかしくて真理子と大笑いして、そんなに落ち込まずに済んだ。

真理子は笑いながら

「ミッシェル ナイスサポート!」

といってサムズアップしていた。

決まりかけていたパーテイの話も多分ナタリアの横やりだろうと思われるキャンセルが、2件ほどあった。

ミッシェルも真理子もリアムに話すべきだと由里の代わりに憤ってくれるけど、こんなことで今東京にいて契約に向けて最後の詰めを行っているリアムを煩わせたくなかった。

そんなことでかなりのストレスを感じていた由里は、悪夢に悩まされることになっている。

いつも、心に余裕がなくなると悪夢に悩まされる。

真夜中に夢から覚めて一人心細くて涙する由里だった。

リアムが隣に寝ているとほとんど悪夢は見ない。

もし悪夢をみてもリアムが気づいて起こしてくれて、抱きしめてくれるとそのまま安心して眠りにつけるのだ。

リアムによりかかるのはやめなければと思うのに、そんな日はやたらリアムが恋しくなる。