真夜中の償い

なんだかその言いようが可笑しくて、由里はふふッと笑ってそれから長い自分語りを始めた。

20年前の7月21日8歳の由里は東京の八王子にある聖ミカエル養護院の近くで保護された。

由里は胸にクマのぬいぐるみを抱きしめて朝の早い時間にとぼとぼと歩いていたらしい。

養護院に電話が入り施設の職員が由里を保護して警察に届けた。

保護したのが養護院だったのでそのまま由里はそこに預けられることになった。

その時由里は8歳でゆりという名前だとしか覚えていなかったらしい。

何か余程辛い事や子供の理解に及ばない酷い経験をしたので記憶を失っているのかもしれない。

とりあえず医者に見せたが体には異常なところはなく心の問題だろうという判断であったらしい。

由里は8歳という割には体が小さくてひらがなの読み書きはできるものの学校に行っていた様子はなかったらしい。

8歳なら小学校2年生になるが算数や漢字などは全く分からなかったと言う。

その時10歳だった田所裕司こと由里が言うユウ兄が由里に算数や読み書きや学校の事を教えたらしい。

体が大きくてガキ大将の裕司は施設でも、自分より下の子供たちの面倒をよく見ていたらしい。

由里が学校に通うようになると、学校でも由里がいじめられないように気に掛けてくれたと言う。

その間も由里の身元調査はされたが全国的にも由里の年齢や容姿に合う行方不明者の届け出もなく、近隣にそんな子供の失踪届けもなかった。

結局由里はとりあえず鈴木という姓を与えられて誕生日は見つかった日の7月21日に8歳になったとされた。

もし里親が見つかればその戸籍に入れてもらって名前は変わるだろうからとりあえずの措置ということだったらしい。

戸籍がなければ学校にも行けない。

保護者は当然院長になる。

他の子供達は何らかの事情で親が育てられなかったり、赤ちゃんの時に養護院の前に捨てられたりしている。

ただ小さければ小さいほど里親が見つかる確率は高い。

由里はとてもかわいい顔をしていたので職員もすぐに里親が、見つかるだろうと思っていたらしい。

そんな時夜中に由里が悲鳴を上げた“痛い痛いやめてパパ、ごめんなさい。いい子にするからそんな事しないでやめて~”
と悲痛な声で泣く由里の事を、最初に気付いたのが裕司だったそうだ。

施設の院長や由里がシスターマザーと呼んでいる女性スタッフは、ただならぬ様子の由里の悪夢を心配し催眠療法が施された。

そして、由里の父親の性的虐待が推測された。