真夜中の償い

しかし、ケンの危惧した東京のホテルの買収に問題が発生して、次の日の昼にはリアムはケンとともに東京に向かうことになった。

ラインだけは由里に毎日送って今東京にいることを告げると由里はびっくりしていた。

詳しくビジネスの話はできないがニューヨークとは13時間の時差があり、なかなか電話では話すことができずに4日間が過ぎその週の木曜日にリアムはニューヨークに帰ってきた。

その間由里からは東京の美味しいお店などを紹介してもらってケンと出かけていた。

ケンはもう少し調整が必要でリアムは一人先に帰国したのだった。

急遽土曜日にどうしても出席しなければいけないパ-テイがあり先に帰ったのだが、パ-トナーが決まっていなくてというか由里以外には頼むつもりもなかった。

リアムは急なことで申し訳ないが土曜日の夜7時からのパーテイに由里の同伴を頼んだ。

しかし由里はどうしてもその日は都合がつかず申し訳ないと言ってきた。

これもすべてラインだった。

電話で声が聞きたいし実際に由里に会いたかったが、お互い時間が合わず結局そのパ-テイにはリアムが一人で出席した。

出席者にはリアムが一人なんてどうしたんだと、揶揄われる始末でうんざりした。

早めに抜け出してきたリアムがホテルのロビー階につくと後ろから

”リアム待って“と呼ぶ声に振り向くと3年前にしばらく付き合ったモデルのナタリアが、小走りに寄ってきた。

リアムの腕に縋りつくように腕を絡ませてくる彼女が煩わしくて腕を振りほでいている時、懐かしく愛しい笑い声が聞こえて振り向くと由里が日本人男性と身を寄せ合って満面の笑みを浮かべて笑いあっていた。

その男が由里を愛おしそうに見やっているのを見てリアムはもう我慢ができなかった。

理性の糸がプチンと切れる音が聞こえるようだった。

ナタリアを振りほどいて、二人の方に歩いていくと何も言わずに由里の腕をとり由里を引きずる勢いでずんずんと歩いていく。

由里はびっくりしてリアムと言ったきり引っ張られ行った。

由里はその男に日本語で

「ゴメン、ユウ兄」というと

「ねえ、もう少しゆっくり歩いてよ。さっきの彼女はいいの?こっちを睨んでるんだけど…」

「いいんだ。君の弁明は後で聞く。来るんだ」

と言うと運転手の待つホテルのエントランスにむけて足を速める。

まるでポリスに連行される犯罪者なみだ。

車に乗るとペントハウスとだけ言って後部座席との仕切りを上げた。

これで運転手に話は聞こえない。

「誰だ。あの日本人は?ずいぶん親しそうで馴れ馴れしそうだったが、今週ずっと会えないといってたのは彼のせいか?」

「そうよ」

由里はとげとげしい口調でそう言うと

「私にとっては兄のように大切な人よ。施設でずっと一緒だったいつも守ってくれて世話をしてくれたユウ兄よ。随一家族と呼べる人だわ。彼が結婚してハネムーンにニューヨークに来てくれたのよ。だから、観光プランを練ったりホテルの予約やアウトレットに行くバスの手配をしたり今日は1日私も合流して美術館やエッジの展望台に行ってテイファニーにも行ってきたわ。そして3人でニューヨークステーキを堪能したところよ」

由里は一気にそういうと不機嫌そうにそっぽを向いた。