真夜中の償い

帰りの車の中で由里は初めて男性に心ひかれた自分を持て余していた。

恋愛は意識して避けていた。

自分のバックグラウンドの一番見たくない部分をさらけ出すにはとても勇気がいる。

男性とセックスできるのかも由里にはわからなかった。

でも自分が好きになったのはとてつもなくお金持ちの非凡で素晴らしい男性だ。

世間からの関心も高くどこに行っても注目される。

由里が横に並ぶなど到底できそうにもない。

でもリアムは由里にそばにいることを望んでいるようだ。

自分はほんとにどうしたらいいのだろうか。

こんな時、施設でいつも兄のように由里をかばってくれて守ってくれた裕司に会いたくなる。

心細い時どうしたらいいかわからない時いつも裕司は、由里に指針をくれた。

由里は自分で判断できるはずだからゆっくり考えて心をフラットに、由里のしたい事やどうしたら幸せになれるかをまず考えるんだといつも言ってくれた。

由里には誰よりも幸せになる権利があるんだとそういう裕司の声が聞こえてくるようだ。

彼、田所裕司は同じ施設で育った2歳年上の男性で由里が大学に進学した2年後同じ大学に入学してきた。

奇しくも大学では2年後輩にあたる。

大学で経営を学んだあと、裕司は中学校から知っている友人で大学も一緒だった笹森と二人でIT企業を立ち上げた。

今では従業員も40人になったと先日の電話で話していた。

起業から4年で急成長しているのだから、裕司の経営手腕も大したものだ。

1年前から裕司の秘書をしているとっても優しくて頭がよく仕事のできる美人秘書と、付き合い始め近く結婚するという。

そんな裕司を煩わせるのも気が引けた。

自分で考えなければと気を引き締める。

今ならまだ傷は浅くリアムを諦められるかもしれない。

由里は逃げるが勝ちという諺が頭に浮かんできた。

でも、由里は逃げるのは嫌いだ。

まっ正面からぶつかって負けるのなら仕方がないと諦めもつく。

勝負する前から傷つくのが怖いと逃げ出すのは由里の矜持ではない。