真夜中の償い

次の日リアムは午前中自宅でリモートでのミ-テイングを終えたら由里を迎えに行く為に、ガレージから愛車を出してマンハッタンに向かった。

昼はどこかで軽く食べて夜はバーベキューをするつもりで屋敷の管理を任せているところに、食材を準備しておいてくれるように連絡して置いた。

由里は明日明後日と2日間お休みだといっていたので、できれば泊ってくれると嬉しいのだがまだ昨日初めて食事をした彼女に、自宅に泊まれとは言いだしにくいが、そんな流れになればと思っている。

でも昨日の食事ではお互い話が弾んだ。

リアムの祖父母の話が気に入ったのかアイルランドにも興味を持ってくれた。

祖父母の話にころころと屈託なく笑う由里の笑顔にドキッとした。

由里は自身の身の上も臆することなく話してくれた。

8歳の時に施設の近くの道をふらふら歩いている由里を施設のスタッフが保護してくれたらしい。

由里はその前後のことも、それまでの8年間も何も覚えていなかった。

ただゆりという名前と年は8歳だということしかわからなかったらしい。

だから、その後の施設での生活が暮らしの基盤になった。

施設にいることの惨めさや自身の境遇に関しても虚しく思ったりすることもなく。

それが当たり前の日常になったという事らしい。

施設の先生方や仲間にも恵まれて自分は世間一般から見たら不幸で不憫な生い立ちなのだろうけれど、由里自身は施設での生活は小さな楽しみをたくさん見つけて、それを仲間と共有して成長していけて幸せだったと思うといった。

どこまでも前向きで明るく人生を楽しんでいる由里がまぶしかった。

昼過ぎにリアムは由里を迎えにロウア-マンハッタンまで車で向かった。

由里の住まいは前の会社で働いていた時と変わらず地下鉄の駅から徒歩5分ほどのチェルシーでも治安のいいところにある。

観光客にも人気のチェルシ-マ-ケットにも徒歩圏内で周辺は落ち着いた住宅街なので、安全で交通の便が良いところも気に入っているといった。

料理が趣味という由里の部屋のキッチンは、部屋の広さにしては大きいらしくそこも気に入った理由らしい。

由里はお弁当を用意していて、リトルアイランドでお弁当を食べようということになった。

朱塗りの重箱に小さな一口サイズのおにぎりと2段目3段目には色とりどりのおかずがきれいに詰められていた。

見た目にも美しい美味しそうなお弁当だ。

リアムは高級和食店のお弁当は食べたことはあるが、家庭的な日本のお弁当は初めてで、優しい味付けと野菜中心の煮物や炒め物が珍しく美味しいと連発しながら食べきった。

由里も旺盛な食欲で二人で3段重のお弁当をきれいに平らげた。

ハドソンリバーに浮かぶリトルアイランドは最近できたところでチューリップに似た形をしたコンクリートのコラムで支えられた水上公園だ。

観光客やファミリ-の遊ぶ姿を眺めながら二人はゆったりとした時間を過ごした。

リアムは久しぶりというより数年ぶりに身も心も解き放たれて、仕事のことは考えず由里の手作りのお弁当と優しい笑顔に癒されて、心が解放されていくのをただ感じていた。

こんな女性は初めてで今までリアムに近寄ってきた女性たちは美しい外見をしていても、ただリアムの地位やお金に興味があったりリアムといることで優位性を感じたがっていただけのように思えて、長く付き合った女性もいない。

由里は多分そんな事には関心はないと思う。

今日は白のTシャツにジーパンと温度調整に黄色のカ-デイガンをはおっている。

ちょっとおしゃれに見えるのはTシャツやカーデイガンはハイブランドのアウトレットの商品だからだそうだ。

車で約1時間の所にあるアウトレットモールには年に2回は行くらしい。

新作は買えないけれどセールに合わせていくと、驚くほど安くハイブランドのものが手に入ると嬉しそうに語る由里が可愛い。

リアムは高校生の初恋みたいにドキドキして由里の楽し気な話やくるくる変わる表情、大きな口を開けて豪快に笑う笑顔に魅せられていった。

由里はまったくリアムにはそんな感情などないのだろうあけすけで無防備すぎる。

ちょっとは男として意識してほしいものだと拗ね気味に思うリアムだった。