ずっと一人が当たり前だったのに、頭の中がすっかり変わってしまった。
 大貫がいないと、私は寂しい。
 大貫とちゃんと向き合いたいと感じる。
 被害者と加害者としてではなく、対等な関係になりたい。
 ううん。できれば、もっと特別な関係に。
 私にはもう、大貫が特別な存在なのだ。
 ――ガサリ。
 急に背後で足音がした。すぐ近くで人の気配がする。
 ふと、おじさんスタッフの言っていた変質者の話を思い出す。もしかしたら。まさか。
 だけど振り向く勇気はなかった。だいたい、変質者とは限らない。ただの通行人かも。それにしては、妙に距離が近いけど。
 ――ガサ、ガサ。
 大きな足音と共に、私は背後から肩を掴まれた。
「っ!」
 息を飲み、振り返る。
 私の背後に人がいる。
 見覚えのない大男だった。
 スキンヘッドに、金色のゴツいネックレスをジャラジャラつけている。パッと見、ヤクザみたいだ。
「なっ」
 なんですか、と言いたかったのに言葉が出ない。
 男はニタァと笑った。
「なあ、なんでお前、家に帰らねえんだよ」
 その言葉で私は察した。
 この男、私の住んでいたアパートを知っている。私がアパートを引き払ったことを知っている。
 この男が私のアパートへ空き巣に入るよう指示したヤクザに違いない。