今日も大貫は午後三時に帰宅した。
 大貫が帰ってからはいつも通りの自分に戻ったけれど、大貫の存在ひとつでこうも自分を保てなくなるのかと、自分で呆れる。
 私の中で大貫はかなり大きな存在になっている。
 でも大貫は私に遠慮して、それでいて同棲を続けていて、ああ、ああ、もう!
「浅野ちゃん、なんかむしゃくしゃしてる?」
 スタッフルームでおじさんスタッフに指摘され、私は日誌を書きながらペロッと舌を出した。
「そんなに態度出てます?」
「出てる出てる。でもその調子なら大丈夫そうだね」
「何がですか」
「いや、ほら最近このへんで変質者が出るっていうじゃない。でも今の浅野ちゃんなら相手をボッコボコにできそう」
 できるかよ。
 おじさんスタッフの発言にイラつきながら、私はあいまいに笑って話を終わらせた。
 腹が立った。けれど、おかげで大貫へのモヤモヤが少し薄れる。
 午後7時半。
 外が真っ暗になって、私も帰宅する。
 今日はいつもより少し早く帰れた。大きなトラブルがなかったおかげだ。
 電灯の少ない真っ暗な道を独り歩き、大貫のマンションへ。
 夜の独り歩きは寂しい。
 今までそんなことを思ったことはなかったのに、最近は凄くそう思う。同じ道を、朝は大貫と二人で歩いているからだ。今は、ザッザッザッと一人分の足音しかしない。それが寂しいのだ。