「あの」
近い、とか、何、とか言いたかったのに、言葉が出ない。
そんな私を、大貫はまん丸の目でじっと見る。
「ありがとう浅野さん」
ささやくように大貫が言った。
目の前、数センチ。吐息すら感じる距離だ。
声を大きくしたら涙がこぼれてしまいそうな、感極まった声だった。
「俺、浅野さんにすげえ最低なことをしたのに、浅野さんは俺のためにこんな素敵な機会をくれた。感謝してもしきれないし、どうお礼をしたらいいかわからない。……どう、謝罪したらいいかも、わからない」
大貫の声が震えている。
自分のしたことを悔いているように聞こえた。重い空気が私の肩にのしかかる。これはきっと大貫が背負っている重圧だ。
大貫の長いまつ毛の下に、曇った瞳が見える。
私はなんとなく、こんな重圧なんて吹き飛ばしてしまえば良いと思った。
簡単に犯罪に手を染めようとした大貫は馬鹿だと思うけど、その罪で潰れてしまうのはもったいない気がする。ちゃんと学習して、ちゃんと前を向いて、ちゃんと生きていったら良いと思う。
私がなんとかする義理なんてないけど、それでも、正しい方向を向けるように協力してあげたくなる。
「大貫くんが真っ当に生きて、私を喜ばせてくれたら、私は嬉しい」
大貫の眉がぎゅっと寄って、彼は苦しそうに目を閉じた。
背負ったものに立ち向かおうと、自分を奮い立たせているのだろう。唇を噛んで力を貯めこむ大貫の頭に、私は手を伸ばした。
ポン、ポン。
「大丈夫。できるよ。できる」
そう言ってあげたくなった。
変なところでつまずいて、ニートになって、犯罪までおかそうとして。そんなしょうもない生き方を続けてほしくない。少なくとも、ここの利用者さんは大貫の絵に喜んでいる。だから、まともに生きてほしい。そう思って仕方なかった。
近い、とか、何、とか言いたかったのに、言葉が出ない。
そんな私を、大貫はまん丸の目でじっと見る。
「ありがとう浅野さん」
ささやくように大貫が言った。
目の前、数センチ。吐息すら感じる距離だ。
声を大きくしたら涙がこぼれてしまいそうな、感極まった声だった。
「俺、浅野さんにすげえ最低なことをしたのに、浅野さんは俺のためにこんな素敵な機会をくれた。感謝してもしきれないし、どうお礼をしたらいいかわからない。……どう、謝罪したらいいかも、わからない」
大貫の声が震えている。
自分のしたことを悔いているように聞こえた。重い空気が私の肩にのしかかる。これはきっと大貫が背負っている重圧だ。
大貫の長いまつ毛の下に、曇った瞳が見える。
私はなんとなく、こんな重圧なんて吹き飛ばしてしまえば良いと思った。
簡単に犯罪に手を染めようとした大貫は馬鹿だと思うけど、その罪で潰れてしまうのはもったいない気がする。ちゃんと学習して、ちゃんと前を向いて、ちゃんと生きていったら良いと思う。
私がなんとかする義理なんてないけど、それでも、正しい方向を向けるように協力してあげたくなる。
「大貫くんが真っ当に生きて、私を喜ばせてくれたら、私は嬉しい」
大貫の眉がぎゅっと寄って、彼は苦しそうに目を閉じた。
背負ったものに立ち向かおうと、自分を奮い立たせているのだろう。唇を噛んで力を貯めこむ大貫の頭に、私は手を伸ばした。
ポン、ポン。
「大丈夫。できるよ。できる」
そう言ってあげたくなった。
変なところでつまずいて、ニートになって、犯罪までおかそうとして。そんなしょうもない生き方を続けてほしくない。少なくとも、ここの利用者さんは大貫の絵に喜んでいる。だから、まともに生きてほしい。そう思って仕方なかった。


