しばらくして大貫を盗み見る。
大貫はスタッフルームのテーブルに紙を広げて無心で絵を描いていた。力強い目元に、彼の意思の強さを感じる。やってやる、描いてやる、という熱みたいな気合が身体中から漏れている。
熱気がジリジリ伝わって、胸が熱い。
ドクン、ドクン、チリリ。
「真剣なときってあんな強い表情するんだ」
思わず呟いてしまった私は頬をパシンと叩き、気持ちを入れ替えて仕事に戻った。
掃除をして、お茶を準備し、送迎車から降りてくる利用者さんたちを迎え入れる。
ご機嫌でマシンガントークが止まらないおばあちゃんの車いすを押してダイニングへ。「お茶飲みます?」と聞いた私に、おばあちゃんは机の上にあった紙の束を指さして言った。
「なんだい、ありゃあ。安売りチラシ?」
見ると、どうやら大貫の描いた絵である。
机の上には、すでに10枚以上の塗り絵が置かれている。もうこんなに描いたのか、と驚きながら私はおばあちゃんに絵を渡した。
「新しい塗り絵ですよ。どうですか、いつもと絵柄が違うでしょう」
「ありゃあ、本当だねえ。ハイカラ。ハイカラだよ、これ。こんなハイカラな絵、塗ったことない」
大貫の塗り絵は好評のようだ。
いつもシンプルな線画を利用しているせいか、おばあちゃんは見慣れない絵に頬を赤らめ興奮している。
「塗ってみます?」
「ええ、良いのぉ? こんなハイカラなやつ。高いんじゃないのぉ?」
「良いですよ、どんどん塗ってください」
「やったぁ、嬉しい」
ポンと手を叩いて喜ぶおばあちゃんに、私は色鉛筆のセットを渡した。小学生女児みたいにキャッキャと鉛筆を握るおばあちゃんは、30歳くらい若返ったように見える。
私は急いでスタッフルームへ向かって大貫に声をかけた。
「ちょっと来て」
大貫はスタッフルームのテーブルに紙を広げて無心で絵を描いていた。力強い目元に、彼の意思の強さを感じる。やってやる、描いてやる、という熱みたいな気合が身体中から漏れている。
熱気がジリジリ伝わって、胸が熱い。
ドクン、ドクン、チリリ。
「真剣なときってあんな強い表情するんだ」
思わず呟いてしまった私は頬をパシンと叩き、気持ちを入れ替えて仕事に戻った。
掃除をして、お茶を準備し、送迎車から降りてくる利用者さんたちを迎え入れる。
ご機嫌でマシンガントークが止まらないおばあちゃんの車いすを押してダイニングへ。「お茶飲みます?」と聞いた私に、おばあちゃんは机の上にあった紙の束を指さして言った。
「なんだい、ありゃあ。安売りチラシ?」
見ると、どうやら大貫の描いた絵である。
机の上には、すでに10枚以上の塗り絵が置かれている。もうこんなに描いたのか、と驚きながら私はおばあちゃんに絵を渡した。
「新しい塗り絵ですよ。どうですか、いつもと絵柄が違うでしょう」
「ありゃあ、本当だねえ。ハイカラ。ハイカラだよ、これ。こんなハイカラな絵、塗ったことない」
大貫の塗り絵は好評のようだ。
いつもシンプルな線画を利用しているせいか、おばあちゃんは見慣れない絵に頬を赤らめ興奮している。
「塗ってみます?」
「ええ、良いのぉ? こんなハイカラなやつ。高いんじゃないのぉ?」
「良いですよ、どんどん塗ってください」
「やったぁ、嬉しい」
ポンと手を叩いて喜ぶおばあちゃんに、私は色鉛筆のセットを渡した。小学生女児みたいにキャッキャと鉛筆を握るおばあちゃんは、30歳くらい若返ったように見える。
私は急いでスタッフルームへ向かって大貫に声をかけた。
「ちょっと来て」


