警察官が言う。
「狙われている以上、ここで生活するのは危険かもしれません。鍵の交換、あるいは、引っ越しもご検討ください」
他人事な物言いに、はあぁぁと大きなため息が私の口から漏れた。
「なんで私が」
空き巣の被害にあって、引っ越しって。なぜ被害者側がこんなに負担しなければならないのか。
「だいたい、鍵の交換は大家の許可が必要ですぐできません。引っ越しなんてどれだけ時間がかかるかわからないでしょ。どうしろって言うんですか」
本当にうんざりする。
「あの」
大貫が小さく手をあげる。みんなの視線が大貫に集まった。
「うちに来ませんか」
その提案にみんな絶句した。大貫が続ける。
「独り暮らしなので、浅野さんの安全が確保できるまで家を提供します。俺は公園で寝泊まりするんで、自由に使ってください」
「いや、なに言ってるの。あなた、加害者。私、被害者。あのね、加害者の家なんて怖くて行けるわけないでしょ」
「でもこの家に居る方が怖いと思います。誰が襲ってくるかわかんないっすよ」
そう言われてみれば、そうである。
ヤクザよりは大貫の方がマシ、なのか? よくわからなくなってきた。
「俺の家、すぐそこのマンションです。オートロック付き。俺は家へ近寄らないようにするし、心配なら玄関にチェーンつけといてください。これが、せめてもの謝罪と償いです」
大貫が深々と頭を下げる。
ふわっと甘い香水の匂いがした。
警察は難色を示したけど、安全性を天秤にかければ大貫の家の方がマシかもしれない。鍵の交換も引っ越しも簡単ではない。セキュリティに難アリアリの安いアパートと比べれば、たとえ加害者の家だろうが明け渡してもらえるなら安全だろう。何かあったらすぐに警察に通報するし、警察もすぐに来てくれると約束済である。
というわけで、私と大貫はそろって彼の家へと向かった。
「狙われている以上、ここで生活するのは危険かもしれません。鍵の交換、あるいは、引っ越しもご検討ください」
他人事な物言いに、はあぁぁと大きなため息が私の口から漏れた。
「なんで私が」
空き巣の被害にあって、引っ越しって。なぜ被害者側がこんなに負担しなければならないのか。
「だいたい、鍵の交換は大家の許可が必要ですぐできません。引っ越しなんてどれだけ時間がかかるかわからないでしょ。どうしろって言うんですか」
本当にうんざりする。
「あの」
大貫が小さく手をあげる。みんなの視線が大貫に集まった。
「うちに来ませんか」
その提案にみんな絶句した。大貫が続ける。
「独り暮らしなので、浅野さんの安全が確保できるまで家を提供します。俺は公園で寝泊まりするんで、自由に使ってください」
「いや、なに言ってるの。あなた、加害者。私、被害者。あのね、加害者の家なんて怖くて行けるわけないでしょ」
「でもこの家に居る方が怖いと思います。誰が襲ってくるかわかんないっすよ」
そう言われてみれば、そうである。
ヤクザよりは大貫の方がマシ、なのか? よくわからなくなってきた。
「俺の家、すぐそこのマンションです。オートロック付き。俺は家へ近寄らないようにするし、心配なら玄関にチェーンつけといてください。これが、せめてもの謝罪と償いです」
大貫が深々と頭を下げる。
ふわっと甘い香水の匂いがした。
警察は難色を示したけど、安全性を天秤にかければ大貫の家の方がマシかもしれない。鍵の交換も引っ越しも簡単ではない。セキュリティに難アリアリの安いアパートと比べれば、たとえ加害者の家だろうが明け渡してもらえるなら安全だろう。何かあったらすぐに警察に通報するし、警察もすぐに来てくれると約束済である。
というわけで、私と大貫はそろって彼の家へと向かった。


