翼の折れたエンジェル

 個別の郵便受けの中をチェックすると、1枚の絵手紙が。
 上京してまもない頃の、私の失敗ソバージュヘアの似顔絵の下には「そばにいるよ」と書いてある。
「コウちゃんってば⋯⋯」
 今日がデートの日なのに。
 時折、彼はいたずらっ子のようなサプライズをする。嬉しいけれど。
「成美、何ニヤニヤしてるの?」
 さっき、自動ドアに激突していたミツが、いつの間に始末書を書き終え、こちらまで来ていた。
 ミツは同じ女子大。今年の夏、ミツが恋人探しをするために、私も人数合わせで合コンに参加した。コウちゃん公認で。
 私は、その合コン相手の男の一人に酷いことを言われた上に、二人で抜け出そうと誘われ、逃げ出したが。
「ううん、なんでもない。今夜、アウトだったね」
「やってらんない!せっかく、成美のお陰で彼氏もできたっていうのに、ゆっくりデートもできやしないし。もう、これまでに何枚始末書を書かされたことやら」