翼の折れたエンジェル

 バカップルみたい、ではなく、実はバカップルなのかもしれない。
「なるちゃん。覚えてる?俺が初めてなるちゃんのことを好きだって伝えたのも、この季節だったこと」
 思えば、中学1年の晩秋か初冬か。
 東京とは違い、もう初雪が舞う帰り道で、
「俺⋯⋯なるちゃんのことが好きだよ」
 そっと打ち明けられた。
 私のほうは、照れてしまって、なかなか本当の気持ちをうまく言葉にできなかったが、彼には伝わっていた。
 あれが、私たちの恋の始まり。
 チラチラと舞う雪が、二人を祝福する花吹雪のように思えた。
「年末は一緒に帰省しよう。その前に、クリスマスデートも」
 昔、ドラマで見た都会のクリスマスデートに憧れたっけ。
 でも、ドラマのようにゴージャスじゃなくていい。
「ねえ、コウちゃん」
「ん?」
「中1の頃に言えなかったこと、いま言わせて」

 私も、コウちゃんのことが大好き⋯⋯。


Fin