「何も疚しいことはしてないんだから、親御さんや寮母さんに、嘘つかなくてもいいんじゃない?」
「確かに、それはそうなんだけどね⋯⋯」
 私がコウちゃんのアパートに泊まる時には、いつも同じ女子大の友達にアリバイ工作を頼んでいる。

 大学進学で上京することが決まった際、母からこの学生会館に住むように言われた。
 私とコウちゃんは幼なじみで、互いの両親公認の真剣交際中。
「コウちゃんはいい子だし、付き合い自体を止めるつもりは全くないわ。だけど、二人して退学しないといけないようなことだけは決してないように⋯⋯わかったわね?」
 高校生になった頃と上京前に、母からは同じことを言われた。
「成美のことを信用して上京させるってこと、忘れないで頂戴」
 そう言ってはいたが、この厳しい学生会館に住まわせることにしたあたり、母のいう信用とは果たして如何ほどのものなのか。

「まるでシンデレラみたいだね」