翼の折れたエンジェル

　ミツは私の肩を抱いて、陽気にエントランスへ向かう。
　私は、苦笑いでコウちゃんに手を振ると、コウちゃんも同じく苦笑いで手を振り返してくれた。
「ただいま戻りましたー！」
「おかえりなさい。今日はちゃんと間に合ったわね」
　まるで、私まで門限破りの常習犯みたいに言われ⋯⋯。

「成美の彼って、素敵ねー！ま、私の彼ほどじゃないけど」
「そう⋯⋯。あれ？そういえばミツの彼、この前、編みかけだったのと同じ柄のセーター着てたわね。もう仕上がったの？」
「うん！だから、スパルタで教えてあげられるよ」
　スパルタまでは、してくれなくてもいいのだが。

　翌日、私はミツに連れられ、手芸用品店へ行き、アドバイス通りのかぎ針と毛糸を買った。
　太陽のようなコウちゃんに似合う、ビタミンカラーのマフラーを編むことに。
「あーあー！そんな雑な編み方⋯⋯不器用って本当だったんだね」
「だからそう言ったじゃないの」