翼の折れたエンジェル

 これ以上はダメ⋯⋯!そう言いたいような、言いたくないような。
「アリバイ工作してるってことは、なるちゃんはいつも疚しい気持ちでここに泊まってた?」
「ちがっ⋯⋯!李下に冠を正さずって言うでしょ!?」
「きっと、誰も信じないだろうね。長く付き合ってて、こんなにイチャイチャして、何度も泊まっているのに」
 どうしよう⋯⋯正直、上京してから、いつコウちゃんの箍が外れてもおかしくないと思っていた。
 コウちゃんは、服の上から私の胸に触れたかと思いきや、すっと立ち去り、数分後に戻ってきた。
「なるちゃん。怖い思いさせてごめん」
 そっと私の頬を撫でながら、
「俺、なるちゃんのことを悲しませることは言語道断だし、なるちゃんの大切な家族のことも絶対に悲しませないよ。約束する。信じてくれる?」
 私は、コウちゃんの誠実さを一瞬でも疑った自分を恥じた。
「信じるよ⋯⋯私のほうこそ、なんだかごめんなさい」