いつからか、すっかり広くなった彼の背中にしがみつき、冷たい夜風とバイクの振動を感じている。
 今年の夏、初めてバイクに二人乗りして湘南に行って以来、バイクデートが定番になりつつある私たちだが、そろそろ寒さがこたえる季節。
 バイクは、私の住む女子学生会館の管理人室から死角になるところに停まり、私たちはフルフェイスを脱いだ。
 時計を見遣ると、22:50。
「よかった⋯⋯何とか門限に間に合って。コウちゃん、ありがとね」
 思わず、安堵のため息をつく。
 二人して周囲を確認すると、抱き合って何度もキスを交わす。
 時を忘れ、熱く激しく⋯⋯というわけにもいかず、私は密かに60秒数えると、そっと唇を離した。
「俺のところに泊まっていけばよかったのに」
「あまり頻繁だと、まずいのよ。ここに夫婦で住み込んでる寮母さんは厳しい人だし、しょっちゅう友達のところに泊まってるなんて嘘、怪しまれちゃう」