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「……ふう、何とか完成しましたわ」


 八重は満咲家の大きくて広いキッチンで一人クッキーを焼いていた。
 ジンジャークッキーとココアクッキー、そしてチョコチップクッキーだ。

 どんなチョコレートクッキーを作るか迷った末、ココアクッキーとチョコチップクッキーの二種類を作ることにした。


「那桜さんはジンジャークッキーのみ、お父様はジンジャークッキーとココアクッキー、明緋さんはココアクッキーとチョコチップクッキーにしましょう」


 それぞれのクッキーを詰めて綺麗にラッピングする。
 那桜の分はラベンダー色のラッピング袋に紫色のリボン、父の分は白いラッピング袋に水色のリボン、明緋の分は赤いラッピング袋に赤いリボンで結んだ。


「……あら、鏡花の分がなくなってしまいましたわね」


 鏡花には別で好物のレモンパイを焼くことにした。
 鏡花が一番豪華な気がするが、親友サービスということにしておこう。

 我ながら上出来だと思えるものが作れ、八重は満足げに頷く。


「あとは明緋さんにどう渡すかですが……」