緊張した指先から訊ねてみた。
《甘いものはお好きですか?》
ピコン、とすぐに既読がついて返信があった。
《めちゃくちゃ好き!》
《今度クッキーを作るのですが、いりますか?》
送信してから、なんてついで感のある聞き方なのだろうと思った。
でも、はっきりとバレンタインのスイーツいりますか? とは聞きにくい。
それにしても、他に言い方はあったと思うが思いつかない自分に落胆した。
《マジで!? めちゃくちゃ欲しい!》
だが八重の気持ちとは裏腹に明緋の反応は好感触だった。
更にこんなメッセージが続く。
《できればチョコクッキーがいいです》
八重は思わずスマホを落としそうになった。
これは、つまりバレンタインのチョコレートが欲しいという意味なのだろうか。
具体的にバレンタインだとは言っていないが、このタイミングは勘繰ってしまう。
《わかりました》
たった六文字を打つだけで指先が震えた。
送信してから既読がつくまでものすごく緊張した。
《ありがとう! すげー楽しみにしてる!》
「やったー!」というスタンプとともに送られたメッセージに、更に鼓動が速くなる。
日頃の感謝を込めて毎年那桜には贈っていたが、那桜以外の男子にスイーツを手作りして贈るのは初めてのことだった。



