事件から三日後、八重はSPたちの同行の元明緋が入院している病院へ訪れた。
頭に包帯を巻いている明緋は、八重の姿を見ると嬉しそうに笑いかける。
「八重! 来てくれたんだな!」
「明緋さん、お元気ですか?」
「元気元気!」
そう言ってニカッと笑う。
思っていたよりも元気そうで安心した。
「明緋さん、この度は誠に申し訳ございませんでした」
八重は明緋に向かって深々と頭を下げる。
「わたくしのせいであなたに大怪我を負わせてしまいました。深くお詫び申し上げます」
「やめてくれよ! そもそも俺が連れ出したのが悪いんだ」
「いいえ、わたくしのせいです。わたくしと出会わなければ、あなたを危険な目に遭わせることなどなかったのですから」
八重は頭を上げると、明緋の目を真っ直ぐに見つめて言った。
「わたくしたち、会うのはこれが最後にしましょう」
「え……、冗談だよな……?」
明緋の瞳には冗談であって欲しいという懇願が見え隠れしていた。
力なく笑う明緋から、八重は目を逸らさない。
「いいえ、本気です。もう連絡もいたしません」
「俺は大丈夫だから! こんな怪我、すぐ治すよ」
「わたくしたち、出会わなければ良かったですね」
「なんでそんなこと言うんだよっ」
「わたくしとあなたでは、生きる世界が違うのです」



