「これだけは信じてください。あの方は、明緋さんは何も悪くありませんの。ですから……っ」
「わかりました」
那桜は小さく吐息をこぼす。
「そういうことにしておきます。総監がどんな判断を下すかわかりませんが、SPたちのことも上手く言っておきましょう」
「ありがとうございます」
勝手に彼らから離れたのは自分だ。
処罰を受けるべきは自分だけで充分だと思った。
「八重、これは染井一家の若頭としてではなく、友人として言います」
那桜は八重の濡羽色の瞳を真っ直ぐ見つめて言った。
「心配した」
「……ごめんなさい」
「無事で良かった」
「ありがとうございます、那桜さん……本当に、いつも」
八重は改めて深々と頭を下げた。
自宅に到着すると、家の前で鏡花が待っていた。八重の顔を見るや否や、鏡花は八重に抱きつく。
「八重! 無事で良かった!」
「鏡花……っ、ごめんなさい」
改めて多くの人たちに心配と迷惑をかけたことを強く認識した。
こんな身勝手な自分を助けてくれて、守ってくれる人たちがいる。
明緋を病院へ連れて行ってくれた大山によると、明緋は肋骨を骨折していたらしい。
すべての治療費は全額満咲が負担することになった。
蕺会の構成員は逮捕された。
まもなく染井一家が蕺会を壊滅に追い込むことだろう。



