恋散るビタースウィート



 待ち合わせ場所に行くと、すぐに赤髪が目に飛び込んできた。


「明緋さん!」
「八重!」


 明緋は八重の姿を見つけると、ぱあっと明るい笑顔を向けた。
 それだけでとくん、と心臓が高鳴る。


「お待たせいたしました」
「大丈夫だったか?」
「ええ、何とか」
「良かった。会いたかったよ、八重」
「……っ!」


 ストレートな言葉に先程よりも大きく脈打つ。
 心臓の音が聞こえてはしまわないかとドキドキした。


「わたくしも、会いたかったです」


 小声でそう答えるのが精一杯だった。


「あのっ、これ、約束していたクッキーですわ」


 八重は鞄の中からラッピングした赤い袋を取り出す。


「ココアクッキーとチョコチップクッキーにしてみました」
「うわあ! すげえ! ありがとう!」


 明緋は嬉しそうに、満面の笑みで受け取る。


「お口に合うと嬉しいですわ」
「こんなの絶対うまいって! サンキューな! 今一枚ずつだけ食べてもいいかな?」
「どうぞ」
「いただきます!」


 明緋はココアクッキーとチョコチップクッキーを一枚ずつ食べた。
 どちらも口に入れた瞬間から、とろけるような笑顔になる。


「うめ〜! なんだこれ! マジでうますぎる!!」


 喜んでもらえて良かった、と八重は安堵する。


「店で売ってるクッキーって言われても信じるよ。めちゃくちゃうめえ。八重天才か?」
「ふふっ、ありがとうございます」