「いや、だから最初からそう言ってるんですけど!」
思わずツッコミをいれる主人公の佐藤 美月(サトウ ミツキ)。
「そうか。しかし、推論というものは“過程”を楽しむものだ。」
「楽しんでる場合ですかっ!」
その間にも、彼は一瞬でスリの手首をつかみ、体を返した。
たったそれだけの動きで、男はひざまずいていた。
次の瞬間、スマホが宙を舞う。
男が逃げ出す。
私の手の中にスマホがポン!と着地し、戻ってきた。
「……すご……」
「観察さえすれば、人間は嘘をつけない。」
「……ありがとう、ございます。」
言葉が震える。
けど、彼はまるでさほど興味がないようにスマホを眺めていた。



