「"スマホ"……? それは何かの暗号名かね?」






「え?ち、ちがっ……貴重品です!すごく大事なものなんです!」




「ふむ。」






 男は少し考え、視線をスリの男に移した。

 観察するように、ゆっくりと。





「左の袖口がわずかに擦れている。
何かを素早く隠した痕跡だ。ポケットに角ばったものの形。目線の泳ぎ方、逃走前の呼吸の乱れ。
――間違いない、盗んだのは彼だ。」





 声が静かに響いた。

 その推理は、まるで詩のように流れ出る。






「つまり、君の“スマホ”とやらは、あの男のポケットにある。」





 私は思わず口を開けた。