午後のティータイムは、いつの間にか夕暮れの紅茶になっていた。



 窓の外の光が金色から青へ変わり、霧がまた静かに街を包む。




「もうこんな時間……」


 そう言うと、ホームズが懐中時計をちらりと見た。


「時は推理と同じだ。気を抜けば、すぐに過ぎ去る。」

「はいはい、……かっこつけて言わないでください。」


「ふっ、事実を述べただけだ。」


 そう言いながら、彼の唇がわずかに笑ったように見えた。






その笑みを見て、私は思った。




 ――この人の笑顔は、たぶん、誰も知らない宝石みたいだ。




 部屋の中に、紅茶の香りがまだ残っている。



 小さなティータイムの午後。


 けれど、その小さな時間が、私の心を確かに満たしていた。