まぶたの裏に、冷たい風が触れた。



土の匂い。



煤けた空気。




馬の嘶き。






 目を開けると、霧の街が広がっていた。

 空は鉛色で、灰色の建物が並び、石畳が濡れて光っている。



 人々は黒い外套を羽織り、馬車が軋む音が通りを抜けた。





「……え? どこ、ここ……」






 息を呑む。





 私は制服のまま。手には学生鞄。

 ポケットを探ると、スマホの感触。

 どれも現実のもの。けれど、世界が違う。