「そりゃ怒鳴りますよ! あなた、あのシャーロック・ホームズなんですよ!? 嘘みたいじゃないですか!」




「君の滅裂な論理はつまらんな。」





 そう言って、くるりと背を向けた。

 まるで霧の中に消えるように、静かに歩き出す。






「ちょっ、待って! どこ行くんですか!」


「悪いが急いでるんだ。」


「え!?待ってくださいってば!私、行く場所もないの!」




「なら勝手に好きなところへ行けばいい。」



「そんな言い方しなくてもいいじゃないですか……!」





 足元の霧がゆらめく。

 心の奥がきゅっと痛んだ。

 世界に取り残されたような感覚。