Jour de neige ある雪の日の思い出

「私ね⋯⋯あなたを諦める為に、他の子とデートしたり、合コンに行ったこともある。でも、どうしてもあなたじゃないとダメだった。もう、あなたに告白するのはこれきりにします。忘れるなんて、きっと出来ないけど⋯⋯好きな人に迷惑だけはかけたくないから」

もう充分、迷惑ならかけたとしても⋯⋯。

彼は暫く無言で私を見つめていたが、鞄から文集のような冊子を取り出して渡してくれた。

タイトルはなく、著者名は彼の本名になっている。

「これ⋯⋯何ですか?」

「短い私小説。いつか渡そうと思ってた。これが僕の答えだよ」



よくわからぬまま、その場で別れたものの、私は帰りの電車ですぐにそれを読み始めた。

内容は、オールラウンダー作家の彼とはいえ、滅多に書かないラブストーリーのようだ。



その内容とは⋯⋯。