Jour de neige ある雪の日の思い出

ほどよく酔った私は、

「ねぇ。あなたはクリスマスの思い出ってある?」

「うーん⋯⋯結局はいつも、仕事ばっかりだったかな」

自嘲気味に夫は言った。

「そうなの?子供の頃は?」

「子供の頃は、歳の離れた兄姉にサンタクロースの正体をバラされて泣いたということぐらいしか⋯⋯」

どうやら、夫はあまりクリスマスにいい思い出がないようだ。

「きみはどうなの?」

「私?何しろ、誰かさんのせいで、恋人と過ごすクリスマスも経験ないしねぇ」

ちょっと意地悪を言ってみた。

「ごめんごめん⋯⋯」

「ふふ。本当は別に気にしてないの。むしろ感謝してる、あなたには」

「感謝?」

「うん。私ね⋯⋯小学生の頃の初恋を、ずっと忘れられない痛い子だったんだけど、あなたと出逢って、やっと忘れられたから」

思えば、このことは話したことがなかった気がする。

「へぇ⋯⋯小学生の頃って、同級生とか?」