この気持ちは生まれてすらいない


早川さんと会ったのは、去年の年末が最後だ。


仕事納めの日に先輩後輩含む五人で居酒屋に集まり、それぞれの近況報告や社内の話題で盛り上がった。


早川さんはハイボールのジョッキを傾けながら、人の話に耳を傾けていた。眉根を寄せ上げた、すこし困り顔にも見えるその笑い方は相変わらずで、私は嬉しかった。


レジでの会計時、同僚がまとめて支払いをしている間、少し離れた場所で早川さんと二人になった。



「よく喋ってたね、今日は」

「あー、すみません。はしゃぎ過ぎでした?」

「いやいや、相変わらずというか。取りあえず元気そうで安心したわ」



店内を忙しく動き回る店員さんを目で追いながら、「早川さんも、変わらずで」と返した。
次に会うのはまた一年後になるのだろうな、と思いながら。



「真中さんはさ、そのままでいてよ」



その言葉に顔を上げると、早川さんは相変わらず穏やかな笑みを浮かべていた。


その日が、最後だ。