この気持ちは生まれてすらいない

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会社から一駅離れた駅前の繁華街にある居酒屋は、時刻が二十三時を回っていたこともあって、すっかりアルコールに浸った客の声で賑わっていた。


オレンジ色の照明に照らされたほの暗い通路を通され、四人用の個室についた。個室といっても通路側に扉があるわけではなく、テーブルを区切る格子状の間切りは天井部分が空いていて、両隣の笑い声は筒抜けだった。

最初に飲み物だけ注文しておいて、「お客さん、多いですね」と改めて周囲を窺いながら感想を言った。



「まぁ、金曜だしね。世間は明日から三連休ですよ」

「あ、なるほど」

「真中さん、日曜は出るの?」

「出ます。火曜が納品日ですもん。次のミーティングで共有したい資料も手付かずですし。早川さんは?」

「俺は休み」



裏切り者、と恨めしい視線を向けると、早川さんは「知らんし」と苦笑した。

お酒とお通しが運ばれてきたので、乾杯する。グラスを傾けながら、休みはどこかに出かけたりするのだろうか、と早川さんのプライベートを想像した。割としっかりと休日を確保しているところを見ると、もしかして、と考えなくもなかった。