その日をきっかけに、早川さんとは仕事終わりにちょくちょく互いを誘い合うようになった。
急に距離が縮まったことに、同僚から勘ぐられることもあったが、私と早川さんの間には本当になにもなかった。
呑み屋で交わされる会話といえば、大半が仕事にまつわる話題であったし、他は、買ったばかりの家電の優秀さを自慢したり、角にぶつけて割れた足の爪が靴下に引っかかることを嘆いたり、くだらないことこの上なかった。
つまるところ、あくまで気の合う仕事仲間なのだった。
早川さんとの時間は仕事のストレス発散になったし、本当に楽しかった。それでも、私はいつしか退社を考えるようになっていた。
そして、意思を固めた段階で、早川さんに打ち明けたのだった。
隣のデスクで黙って私の話を聞いていた早川さんは、おもむろに手のひらをぱんと合わせ、「それじゃ、今日も呑みに行きますか」と私たちの間ですっかり決まり文句となった台詞を口にしたのだった。
