乙女はすぐ近くにいた

乙女は黒髪だった

闇夜のように暗く

烏の濡れ羽のようにつややかだった

乙女は窓際に座っていた

カーテンが

ベールのように白くたなびいた

窓から差し込む日の光は

乙女の濡れ羽色の髪に環をかけた

乙女の頬は水水しさをたもった桃だった

乙女の素肌は絹だった

乙女の唇は乙女のからだを流るる血液だった

乙女の声は小鳥だった

乙女がほほえんだ

光が射した

乙女は息をしている

生きている

この世に生きているのだ

乙女は死んだ

花が散った

小鳥はさえずりをやめた

水は輝くことをやめた

わたしは生きた