恋をして、大人になった。

中学生になって、恋という言葉の意味を少しずつ知りはじめた。
ただ“憧れ”じゃなくて、心の奥がじんわり熱くなるような感情。
その人を見かけるたびに、胸が高鳴った。

彼は部活の先輩だった。
ある日、練習中の真剣な表情を見て、
その姿に一瞬で惹かれた。
それまで意識していなかったのに、
気づけば目で追っていて、「好きかも」と思った。

夏休みのある日、勇気を出してメールを送った。
“先輩のことが好きです。”
たったそれだけの言葉。
送信ボタンを押す手が震えて、心臓がうるさいくらい鳴っていた。

数時間後、返ってきたメッセージを開いた瞬間、息が止まった。
――「Hしてくれるなら付き合う」

意味をすぐには飲み込めなかった。
でも、好きな気持ちの方が勝っていた。
「それでもいいから付き合いたい」
そんな風に思ってしまった。
結局、曖昧に笑って“うん”と返してしまった自分がいた。

だけど、新学期が始まっても、彼は何も言わなかった。
普通に部活に来て、他の子と話して、
まるでそんなやり取りはなかったかのように過ぎていった。

そのうち、彼がわたしの親友のことを好きだったと知った。
その瞬間、胸の奥がズキンと痛んだ。
“好き”って、こんなに苦しいものなんだと初めて思った。

恋って、夢みたいにきれいなものだと思っていた。
でも現実は、あっけなく壊れて、
その破片が心に刺さるようなものだった。

それでも、今なら分かる。
あのときの自分はただ、まっすぐすぎただけ。
好きだから信じたくて、
相手の言葉をそのまま受け止めてしまった。

あの夏の失恋は最悪だった。
けれどあの痛みが、
「誰かを大切にすることは、自分も大切にすること」だと
気づかせてくれたのかもしれない。