期末テストが終わった。
私は、学年順位を二十位上げた。

「咲希どうしたの?急に真面目になったじゃん。」

テスト後、久々に一緒になった帰り道、由衣に聞かれた。

「いやあ、自分でも上がりすぎてビビってるんだよね。」

まさか、由衣といえど、実際の理由まで言えない。

「そっか・・好きな人でもできたかと思った。」

きっと、彼女にとっては、冗談のような何気ない一言なのだろう。

「ウチが頑張れるとしたら、一輝のためかなあって思うし。」

由衣には、こういう所がある。自分の言葉が誰かに刺さっているのに、それを自覚しない。

「まあ咲希はあんまそういうのないか。」

私は、由衣のその言葉をスルーできなかった。

お前には恋なんて分からない、そう言われているような気がした。

「私だって!」

思わず口走って、でも、続く言葉が見つからないことに気づく。



私は、彼の何でもない



「え?咲希、どうしたの?」

少し驚いたように、由衣が問いかけてくる。

「あ、いや、なんでもない。」

慌てて誤魔化した。

由衣は少し不思議そうにしながらも、会話を続ける。

「あ、でも、咲希にはあの子がいるじゃん。ほら、沖田くん。」

彼の名前を聞いた途端、鼓動が速くなった。

「あの子を彼氏にしちゃいなよ。いいなあ、勝ち確じゃん。」


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 家に帰ると、由衣の言葉が蘇った。


「勝ち確じゃん。」

そうだ。彼は、私のことが好きなんだ。

何も焦ることは無い。彼が告白してくるのを待っているだけでいい。



これは、絶対に負けない恋愛だ。