次の日の教室で、沖田という男子を探してみた。

私の席から、右ななめ前方向。

朝練を終えて帰ってきたのか、額には汗が見える。

改めて見ても、由衣の彼氏の一輝みたいな、目立つタイプではない。別に地味なわけでもないけど、今まで気にもしてなかったような男子。


でもよく見たら、肌はきれいだし、優しそうな二重まぶたは吸い込まれるような魅力がある。男子の友達も多いらしく、一輝や竜太あたりとも仲良く話していた。

見ていれば見ているほど、彼に引き込まれるようで、もっと知りたい、関わりたいと思ってしまう。家に帰って、クラス名簿を引っ張り出した。



あった。出席番号七番 沖田拓海《おきたたくみ》


「拓海っていうんだ。」

たくみ、たくみ、と口に出してみる。

動悸が止まらない。この気持ちを何というか、言われなくても分かってる。

十五才、私は、まだ話したこともない男子に、驚くほど簡単に、


恋に落ちた。







 「恋をしたら世界が変わって見える」

ラブストーリーに、恋愛ソングに、必ずと言っていいほど登場する、ありきたりな言葉。

でも実際に、彼に恋してから、毎日が眩しいほど輝きだしたんだ。

彼に会いたい。顔を見たい。声が聴きたい。
学校に行くのが、楽しみで仕方ない。

彼の成績が優秀だと聞いたから、近づきたくて、久しぶりに机に向かった。授業も聞いたし、テスト前は真っすぐ家に帰った。


私が教室に残らないことに由衣は驚いていた。
でも彼女だってどうせ一輝と二人で帰るんだ。私の恋路を邪魔する資格なんてない。