ふたりは踊っていた

氷の上を 

軽やかにリズムを刻みながら

ふたりはみつめ合っていた

まるで世界にたったふたりしかいないというように

ふたりは愛し合っていた

海よりも深く

ときには上空もを飛躍するほどに

世界にはふたりしかいなかった

冷たい氷の上を

ただ一心に踊っていた

呼吸がとまると思った

星がふたりのまわりをまわっていた

祝福するかのように

さかながあしもとを旋回した

ふたりは何千年も前から踊っていた

これからも踊りつづけるのだろう

何千年という月日を

からだが朽ち果てるそのときまで

やがて女は朽ちるだろう

男はひとりで踊りつづけ

世界は終わるだろう

世界はふたりを包み込んだ