2028年10月中旬。結月が生後1ヶ月になると佑香の友人や知人にも結月の可愛い顔を見せていた。幸人には友人がいないため見せる人はいないが、唯一見せた人物がいた。それは
「おぉ~幸人君!奥さんお綺麗だな!」
「はじめまして!主人がお世話になってます」
「いやいや〜?俺なんて幸人君に助けられてばっかだよ」
「坂本さん…あまり恥ずかしいこと言わないでくださいよ?」
「おっ?今笑った?」
「いえ、笑ってません…」
 そう。幸人にとって唯一の知人は坂本逸郎だ。警視庁葉琉州警察署に務める警部補で、彼の元上司。恩師とも言える存在だ。
「おっ?結月ちゃんか〜可愛いなぁ!お2人にそっくりだ!」
 幸人は誰もが口を揃えてイケメンとコメントするほどで、妻の佑香も学生時代モテモテだった美女。将来結月は絶世の美女になるだろう。
「将来はきっと…アイドルかモデルさんだな!」
 幸人はとある事情で笑顔を失っている。誰かに笑顔を向けることは非常に稀なことであり、坂本は笑顔と言えるかわからない微笑みしか見たことない。いつか彼の本当の笑顔を見れることを夢見ていた。
「これ!俺からの出産祝い。可愛い結月ちゃんなら絶対似合うと思ってな!」
 出産祝いは薄ピンク色のベビー服。天使の結月にきっと似合う色だ。
「主人にこんな良い上司さんがいて本当に誇らしいです。あなた、今日予定なかったら飲みにでも行ってきたら?」
「ですが…」
「結月のことは私に任せて!お義母さんもいるし」
「じゃあ…」
「決まりだな!今日は俺の奢りだ!何食べたい?」
 その日の夜は坂本の奢りで焼肉居酒屋で飲み明かした。楽しかった酒の席が、幸人と坂本が会った最後の日になってしまう…

 坂本の死から翌日。葉琉州警察署では 
 バタン…
「はい…うわぁっ!?悪魔だ…!」
「今更何しに来たんだ…!」
「落ち着けっ!すまないな…待ってたよ」
 ちょっと顔を見せただけで悪魔呼ばわりされるとは…確かに無理もない。刑事時代から殺人犯が少し抵抗しただけで平気で殺してしまっていたからな…山口は冷たい視線を抜け
「付いてきてくれ…」
 コツ…コツ…
「久しぶりだな…随分良い顔になったじゃないか?」
「ご挨拶はこれくらいでいいです。それより、まだ御遺体は無事ですか?」
「あぁ…こっちだ」
 山口に案内された遺体安置所。死後から1日しか経っていないのか腐敗はほとんど進んでいない。初めて彼は、命を失った坂本と対面する…
「坂本さん…どうして…」
 バタン…
「坂本さん…こうなるんだったら…もっと笑顔を見せておけばよかった…」
「水瀬君…」
 初めてしくしく泣く姿を見る。彼は坂本のことが好きだったのだろう。涙をハンカチで拭き
「死因は何なんですか…?」
「まだわかってない…そもそも亡くなった場所は坂本さんの自宅だ。室内は争った形跡もないし何者かが侵入した形跡もない」
「そのジャムみたいな血液ってどこから?」
「そうだ…吐血した血液がドロっとしてたんだ。死に至る病気にだって罹ってなかったはずなのに…」
 この話だけじゃ解決の糸口すら見付からない。それにジャムのように固まった血液。勘だが他殺の可能性が高いだろう。
「すいません…坂本さんの御遺体、僕が預かっていいですか?」
 ここはあの女性に頼るのが懸命だろう。
「わかった…君のことなら俺は信じるよ。それに坂本さんがな、水瀬君は部下じゃなくて友達だって言ってたよ」
「友達…か…」
 彼は山口にほんの少しの笑みを見せて目配せをした。

 数時間後。彼は坂本の遺体をRose Orangeへ運んでいた。目的は玲乃に解剖してもらうためだ。
「突然すいませんが、お願いします…」
「気にしないで。1時間くらい貰うわ」
「わかりました」
 彼は手術室から離れて一旦待機。玲乃の知識と技術にかかれば何かわかるかもしれない。果たしてジャムのような血液の正体は?
「やっぱりダメか…」
 シリンジでは血液を採取できないほど固まっている。だが奇妙なことに一切凝固したような感じはない。取り敢えず顕微鏡でも使わない限り確かめようがないだろう。プレパラートに一滴の血液を垂らして光学顕微鏡にかけると…
「ん…?」
 光学顕微鏡が映している血液には何も変化がない。電子顕微鏡でなら何か映るか?
「これは…」
 まるでウイルスのようなものが見える。電子顕微鏡でなきゃ確認できないのは相当ミクロな存在だ。まさかコイツが血液をジャムにしたのか?確かに世界には発見されていないウイルスは存在する。最近だと永久凍土やマリアナ海溝から見付かった未知のウイルスなどが有名だろう。まさかこれも未知のウイルスとでも言うのだろうか?すると彼女は
「愛菜ちゃん!」
「どうしたんですか?」
 彼女の呼び掛けで現れたのは水谷愛菜(29)。微生物やウイルス、あらゆる細菌を研究している科学者である。つい最近玲乃の助手として働き始めたばかりだ。
「この血液をすぐ解析にかけてほしいの」
「ジャムみたい…わかりました」
「頼むわよ」
 流石にスーパードクターの玲乃でもウイルスの正体がわからなかった。そもそも雪の結晶のような形をしたウイルスは見たことがない。もし日本各地にばら撒かれているようならかなり厄介だ…

 バタン…
「何かわかりましたか…?」
「いえ…」
「そうですか…」
 あの玲乃でもわからないとは…すると彼女は30度のお湯と自分の血液、毒のような成分を取り出した。
「これはラッセルクサリヘビの毒よ」
 ラッセルクサリヘビとはクサリヘビ属の毒蛇だ。何故それを取り出したのかといえば
「例えば私の血液に一滴垂らし…そして私たちの体温と同じ温度で血液を温めたら、その後どうなると思う?」
 彼は毒蛇についてはそんなに詳しくない。どうなると質問されても血液がどうなるかは想像できない。やがて温められた血液は
 ドロッ…
「ん…?」
 何と血液はゼリー状に固まっていた。これは出血毒と神経毒の効果で血液をゼリー状に固め、体内で腎機能障害などを引き起こす。
「見ててわかると思うけど、こっちは完全に固まってるに対して」
「完全に固まってない…?」
「そうよ…だから毒成分の類ではなかった。電子顕微鏡で見たらコイツが発見されたの」
「雪の結晶…?」
「今解析をかけてもらってるけど、こんなのは今まで見たことないわ」
 雪の結晶のようなウイルスにジャムのようにドロドロした血液。もし他殺に使われたのなら人工的に作られたウイルス、もしくは細菌兵器の線が浮上してくるだろう。すると
「私の勘だけど、おそらくこれは細菌兵器だわ…」
「明美さん?」
「久しぶりね幸人君。赤ちゃんおめでとう…と言いたいところだけど、執行人はよくトラブルに巻き込まれるんだか?」
 今思えば2年前から今に至るまでそこまで大きなトラブルに巻き込まれることはなかった。トラブルといってもまだ序の口なのは言うまでもないが、惨劇の前触れであることを肌で感じる。
「さっき情報屋から連絡があったんだけど、厄介なことに同じような症状を訴える人が何人もいるみたいなの。既に100人以上…」
「100人…!?一体どこから…」
「それだけじゃないわ…これ見て」
 明美が見せたのは誰かが撮影したのだろうホームビデオの映像。そこには…

「よしみんな集まって!」
「そんなにはしゃいだら良く撮れないだろ?」
 撮影者は父親と思われる男性。そこに映っているのは母親と7歳くらいの男の子と3歳くらいの女の子。家族旅行を映した思い出溢れる雰囲気が映像から感じる。微笑ましい内容にしか見えないが…
「何かしら…?」
 再生から4分ほどして映し出されたのは彷徨く若い男性。撮影されたのは昼頃。昼間から酔っ払っているのか?
「どうかしました?」
 母親が親切に男性の様子を窺う。だが…!
「キャァァ…!」
「ママ…!?」
 突然男性が母親の女性に噛みつくように押し倒した!撮影者は慌ててカメラを投げて駆け寄り
「やめろ…!妻から離れろ!」
「パパ…!ママァ!?」
 そのまま女性は息絶えた…だが勢いは一切衰えず撮影者の男性にも噛みつき
「……」
 カメラは斜めっていたため不鮮明だが、これは明らかに人間が人間に喰らいつく瞬間を捉えている…

「ゾンビですかこれ?」
「でも待ってください…この男性何か喋ってませんか?」
「流石鋭いわね」
「うめき声しか聞こえないけど何て聞こえんの?」
 彼は動画を少し巻き戻すと
「ここです」
「ち…く…ださ…い…」
「えっ…?今何て…」
「これよく聞くと、血をくださいって聞こえませんか?」
「そう…ゾンビならこんな声を出してお願いするように獲物を求めるかしら?まだ警察は公表してないけど、遺体は噛み切られたより一部分だけを噛まれてた」
「一体どういうことよ…!?」
 もしもこれが同様の類ならもはやバイオハザードだ。この現代では未曾有の生物災害。今回坂本が感染したと思われる細菌兵器の出どころすらわからない今はどう対策したらいいのすら検討もつかない。
「ですが…もし今回坂本さんの死因の細菌とこの動画の男性と何か繋がりがあるんでしょうか?」
「まだ確証は何もないわ。けど、私の勘では同様と睨んでるわ…」
「ちょっと待ってください…!もしそうなら血がジャムのようになるのと人の血を吸うこととどんな関連が…?」
 この繋がりは玲乃すらわからない。進展がない話に幸人も脱力感ある顔色を浮かべる。彼は医療従事者ではないがふとある病気の症状が頭に浮かんだ。
「例えば、糖尿病のような症状が出ているとか?」
 皆様も糖尿病の初期症状、喉が渇いてかなり大量の水を飲むことを聞いたことがあるだろう。それは血中の糖度を薄めるために水を欲するためだ。
「もしかしたら、ジャムになった血液をサラッとした血液に戻すために、どういうわけか人の血を求めるとは考えられませんか?」
「一理あるわね…けど問題は感染させた目的よ」
 プシャッ…
「もう飲むんかいっ?水瀬は本当に酒好きね?」
 考えごとをしていると彼は真っ先に缶ビールを飲むことが多い。
「わからないことだらけです…」
 だが彼らの知らないところで、街にはとんでもない惨劇が既に始まっていた。

 その日の夜。時刻は17時だが陽は沈みきって良い子は帰る時間。仕事を終えた真美はいつものようにトレーニングジムに向かおうとした頃
 バタバタバタ…!
「助けてくれ…!」
「どうかしました…!?」
 こんな真冬の中上半身裸でサンダル姿の男性が恐怖に怯えた表情で走ってきた。彼女は落ち着かせようとするが
「わかりました!取り敢えず警察…」
「それじゃ間に合わない…!妻が…妻が…!それにまだ家には子供も…!」
 これはただ事じゃない。それに裸で飛び出すなんて正気の沙汰じゃない。
「わかりましたから落ち着いてください…!とにかく案内してください!」
 本当なら走った先に頼りがいありそうな男性がいれば頼りたかったのだろうが、細身の女性に助けを求めるのは相当なこと。
「取り敢えずこれ着てください!ちっちゃいかもですがないよりいいですよ?」
 彼女は男性にコートを着せて取り敢えずは男性の自宅へ。だが辿り着くと目を疑うような光景が広がっていた…彼女は土足のまま玄関から入って家族団欒なはずのリビングへ入ると
「彩花…!?」
「何てこと…」
「グゥゥゥ…!血…血をください…!血ィ…!」
 何とまだ2歳にも満たない男の子がお腹を食い破られるように殺されていた。まさか母親が殺したのか…!?それに彼女たちを睨みつける目が人間と少し違い、口元はゾンビのように真っ赤に染まっている。まだ理性があるようには見えるが
「お願いです…あなたでいいですから…血…血…血…グワァ…!」
 女性が彼女に向かって歯を剥き出しにして襲い掛かる!彼女は咄嗟のことに行動ができず
 ドテッ…!
「グゥゥゥ…グワァ…!」
「(力が強い…!?こうなったら仕方ない)ごめんなさい…許して!」
 ドゴン…
 彼女はキックで離らかすと
 ドゴンッ…!ガシャーン…!
 彼女の回し蹴りが頭部にクリーンヒットしてテレビ台に倒れ込む。
「はぁ…はぁ…」
「彩花ぁ…!?何で…こんなことに…」
「そのうち警察が来る…私も一緒に警察に行きますから…」
 頭を強く打ったが女性にはまだ息がある。だが息が完全に猛獣のようだ。幼い息子が母親に噛み殺された光景…状況こそ違うが2年前に行動を共にした憧れの存在、高橋知沙のことを思い出してしまう。
 ウーウーウー!
「通報を受けて来ました!宮内敦也さんですね?署までご同行願えますか?」
「君は…?」
「神戸真美、第一発見者です」
「わかりました。ではあなたも署までご同行お願いします。奥さんを保護するんだ」
「気を付けて…油断してると噛みつかれます。ちょっと両手と口を塞いでおいた方がいいです」
「噛みつかれる?そんなバカなことが…」
 一人の若い警察官が女性を立たせようとした瞬間
「ガァァ…」
 ガブッ…
「うわぁぁ!痛ぇ!?何だコイツは…!?」
 気を失ってから目覚めるまで数分。ゾンビなのか?彼女が再びキックの体勢を取ったが
 バーン!
「……」
 バタンッ…
「彩花…!?彩花…彩花…」
「安元さん…!?すぐ銃を撃つなんて何考えてるんですか!」
「この女性はもう人間とは言えないじゃないですか?現にこの人を噛み殺そうとしたわけです」
「ほう…最近の警察は平気で人を殺せるようになったんですか?」
「何…?あの水瀬幸人よりマシですよ…あんな悪魔と一緒にされては困る…」
「幸人が悪魔なら…あなたは何て呼ばれてるのかしら?」
 今彼女と睨み合っているのはつい最近千葉から葉琉州警察署に異動してきた刑事、安元雅也(33)。離れた県にいても悪魔、水瀬幸人の異常性はかなり聞いているようだ。
「あんたのことは知っているよ神戸真美さん。水瀬幸人との関係もね…」
「何が言いたいのかしら?私が幸人と関わりがあるなんて誰も知らないはずなのにね?」
「せいぜいこれからのことは要、気を付けておくんだな…フンッ…執行人さん…?」
「余計な口は慎んだ方がいいわね…」
「まあいい…おい!適当に死因作っとけ」
 渋い顔をする後輩の警察官に雑じゃ言い表せない指示を出す。そのまま安元は絶望する男性と彼女の前から去ろうとした瞬間
「待ちなさい…」
「何です…?」
「あなたの顔はハッキリ覚えたわ。もし少しでも人道に外れる行動をしたら…どうなるかわかってるわね?」
「フンッ…ありがたく聞き流させてもらいますよ」
 コツ…コツ…
 執行人から社会復帰したはずなのに再び執行人と呼ばれるのは面白くない。どれだけの人間が自分のことを知っているのか?これからどんなことに巻き込まれていくのか?そんなことを考えていたら
「大丈夫ですか…?」
 男性は妻と息子の亡骸を前に跪いている。男性、宮内敦也の話によると風呂から上がってビールを飲もうとしたら突然妻が無言で近付いて抱き着いてきたという。元々甘えん坊の妻なため特に疑わなかったが、突然「血を寄越せ…!」と見たこともない恐怖の表情で噛みつこうとしたらしい。まだ服を着る前だったためほぼ裸で外へ飛び出し、真美が傍にいたというわけだ。彼女の無念の想いで両手を合わせようとすると
「ん…?」
 撃たれた箇所から出ている血が普通の血とは違う。何なのこれは?
「ごめんなさい…写真撮っていいかしら?」
「構いませんけど…ところであんた何者なんだ?」
「私はグランドマーミンの秘書よ。ただの秘書ってわけじゃないけど」
「どういうことですか?」
「この先は知らない方があなたのため、ですよ?」
 この1件は間違いなく明美か幸人案件だ。元執行人として見過ごすわけにはいかない。

「お手間掛けさせて申し訳ないです」
「何…幸ちゃんの頼みならいつだって聞くさ」
 幸人は情報屋、刈谷剣のもとへ情報を聞きに行っていた。
「まずあのホームビデオを撮影していたのは一家の父親、鈴木大輔さんだ。あんたの想像した通り、家族旅行を映した映像だよ」
「それで血をくださいと微かに言って女性に襲い掛かった男性は?」
「その後の行方は不明だ。あと映っていないが、残った子供たちも噛み殺された…」
「何てことを…それで今回のジャム血液と関係はあるんですか?」
「俺は情報屋だが科学者ではない。残念ながら関係性までは掴めていない…」
 凄腕の情報屋でもそこまでは掴めていなかった。やはり坂本の死と人間による獣害事件は一筋縄では行かないか。
「だが吉報だ。どういうわけか誰かに脅されて、例の細菌兵器を打ち込んで感染させてる男の身元が割れた」
 流石は情報屋。その言葉で彼はつい微笑む。
「僕の公安ネットワーク以上の情報とは素晴らしいです。聞かせてください」
「おそらくこの男は差し金の一人にしか過ぎないが許してくれ。名前は会社役員の柳澤規夫44歳。今は癌治療の母親を介護してて仕事は休職中だ。これはあくまで想像だが、母親をダシに使われたんだろう…」
「よくあるパターンか…」
 脅されて従ったのなら執行対象にならないが、罪の重さを理解させる必要はあるだろう。早い話柳澤という男を捕まえて情報を聞き出すのか得策だ。
「情報感謝します」
「待った…」
 トン…
「一つ確かなことがある…細菌兵器は空気感染もあるようだ」
 空気感染…その言葉を聞いた途端彼に戦慄が走る。つまり誰でも感染する恐れがあるということだ…!
「幸ちゃんが罹ったら元も子もない…とにかく気を付けるように」
 これほどの事態なのに何故警察は公表しない?対策を講じようともしない?彼は歩きながら携帯を眺めていると…
 ピコンッ…
「真美さんか?珍しい…」
 メールの文面には
「久しぶりね幸人…ちょっと大変なことがあったの。さっき若い女性が小さい息子のお腹を噛み千切って殺す事件が起きたの!女性は一人の刑事に射殺されたわ…おそらくだけど幸人の周りでも同様の事件が起きているはずよ…」
 一体何が起きているのだ…?まさか一般家庭にも感染が及んでいるのか?それでも一つ確証が持てたことは、雪の結晶のような細菌兵器と人間獣害事件は同一で間違いない!それに…
「急がなければ…!」
 ドッドッドッ…
 彼は猛スピードで全力疾走。真美から送られた1枚の写真には、ジャムのように固まった血液と口に血が付着した女性の遺体が写されているからだ…!