【1話】
◆本編より先の未来・響也の部屋・夜
手首から血を流す鈴理の腕を取り、頬を擦り寄せる響也。
響也「おとぎ話じゃなく、本当に吸血鬼だったらよかったのに」
鈴理「っ…」※息をのむ
◆現在・ビルが立ち並ぶ中心街・夕方(日暮れ過ぎ)
街中を歩く人混み、街灯の明かりがつきはじめている。
鈴理モノ『悪魔や天使、妖怪などの伝承がおとぎ話だったのは過去のこと。
その多くはーー人智を超えた力を持つ、異能力者”Luno”だったと言われている』
人混みを縫うように走り抜ける鈴理。
鈴理モノ『異能を覚醒する人間は極めて少なく、人口の9割は無能力だ』
◆繁華街前のスクランブル交差点
交差点を多くの人が行き交っている。
鈴理モノ『そのためLunoは長年ひそかに国の発展と平和維持に貢献していた』
◆繁華街の大型ビジョン前
女子高生が大型ビジョンに映し出された美男子を指す。
女子高生1「RAUだ! かっこいいー!」
女子高生2「RAUってたしかLunoなんだよね! ほんと国宝級イケメンすぎる!」
鈴理モノ『現在、異能は恐れられることなく国家公認の存在となっている。数々の功績と容姿に優れている彼らを情報社会となった現代で秘匿できるはずもなく、認めざるを得なかったと言うのが大人の事情だと思う』
◆古いビルの一室
薄暗い室内で椅子に縛られて拘束されている響也。
響也「…」
部屋の奥では薄汚い格好をした男たちが「異能阻害をつけている」「計画は順調だ」などヒソヒソと話し合っている。
◆繁華街の路地裏
足を止め、ビルを見上げる鈴理。
鈴理モノ『だからーー”Lunoがいれば富と栄光を獲られる”なんて愚かな考えをする人間が後を絶たない』
鈴理「すぅ…」
静かに息を吸った鈴理が、地面を強く蹴り、ビルの間を壁をジグザクと走るように上に向かって飛び上がる(パルクールのような動き)
そして最上階まで到着すると、部屋の窓を蹴破る。
◆古いビルの一室
蹴破った窓から、鈴理が部屋の中に入る。
鈴理モノ『Lunoが希少さ故に狙われるのは現代の裏常識だ』
ガラスの破片が飛び散る中、ふわりと降り立つ鈴理。
男1「なっ!?」
男2「くそっ」
男3「こんなガキひとり、やっちまえ」
薄汚い格好をした男たちが鈴理に襲いかかる。
男4「ぐっ」
あっという間に薄汚い男たちを倒す、鈴理。
男たち全員が地面に倒れ込んでいるなか、まだ意識を失っていない男3がうめく。
男3「護衛は…無能力の人間だったはず…」
服についた汚れを払う鈴理がくすりと笑う。
鈴理「えぇ。ただし、忍びの血筋をひく無能力者よ」
◆月詠家の医務部屋・夜
白く清潔感のある部屋。
棚の中から消毒液などの道具を取り出す鈴理。
鈴理「ほんとガキなんて、失礼だわ。今年には19、来年20歳になる立派な淑女なのに」
※現時点では18歳だが、お姉さんアピールをしている
響也「鈴理は小柄だからね」
響也がクスクスと笑う。鈴理、むっと片眉をあげる。
鈴理「響也様、笑い事ではありません。なぜ、相談なくお出かけなされたんですか?」
椅子に座る響也の前に座る鈴理。
縛られて赤くなった響也の手首を優しく治療する鈴理。
響也「どうしても欲しいものがあって」
鈴理「私に言ってくださればお父上の和眞様に内緒で買ってきますよ?」
響也「ふふっ。さすが鈴理だね。僕の欲しいものに検討がついているようだ」
鈴理、響也に褒められ嬉しくなる。すこし頬が赤くなる。
鈴理「…欲しいものが何かまではわかりかねますが。しっかりされている響也様のことです。何も言わずにお出かけされたということは”和眞様などの他の方に知られたくないものを求めていた”と考えるのが当然かと」
響也「そうだね。もう僕も春から高校生になるしね」
パッと顔を上げた鈴理の瞳はキラキラと輝かせている。
鈴理「えぇ、えぇ! 大変喜ばしいことです! こーんなに小さかった響也様が…」
膝下までに手を下ろした後、自分の両頬に手を当てて悦に浸る鈴理。
響也「そんなに小さくはなかったと思うけど」
困ったように笑う響也。
鈴理モノ『響也様は政界にも影響を及ぼす月詠財閥の御曹司である。そして多くのLunoを排出している名家でもある。まさに富と栄光の一石二鳥を狙うことができる稀有な存在。そんな響也様を守るべく、私は専属護衛として仕えている』
◆回想・和室の離れ・昼
鈴理モノ『そう、響也様と出会ったとは10年前のこと』
離れの窓から外を見る響也(5歳)、窓外に立つ鈴理(8歳)が向かい合う。
鈴理モノ『本当に、本当に…可愛らしかった!!』
儚げ美少年姿の響也が目を潤ませ笑う姿を浮かべ、回想に浸る鈴理。
◆現在・月詠家の医務部屋・夜
響也「それでーー父上に…って鈴理ってば、また話を聞いてないんだから」
過去の記憶に浸っている鈴理を楽しそうに眺める響也。
響也「都合がいいから、別にいいけどね」※誰にも聞こえていない。ひとりごと
ニコニコと笑う響也に意識が戻る鈴理。
鈴理「はっ! すみません。幼い響也様が愛らし過ぎて…」
響也「ふふっ。鈴理は本当に幼い僕のことが好きだね。自分のことなのに妬いちゃいそうだ」
鈴理「や、焼く!? まぁデータはクラウドに保存しておりますので、写真を焼くことで今回のお気持ちが晴れるならばやりましょうか。たしか焚き火には心を癒す効果があると言いますし…」※真面目な表情
響也の発言を不思議に思いつつ、響也のためにあれこれ考えはじめる鈴理。
響也「鈴理」
鈴理「はい。ほかになにかございますか?」
顔を上げて返事をする鈴理。
響也「それよりも先に鈴理の血が欲しい」
鈴理「響也様っ!? まさか」
ハッと息をのむ鈴理。
小さくうなずいた響也は眉を下げて困った表情を浮かべる。
響也「捕まりそうになった時に異能を使ってしまったんだ」
◆響也の部屋
畳の上に敷かれた布団の上で向き合う響也と鈴理の2人。
鈴理が袖をまくり手首のリストバンドを外し、採血用穿刺器具を当てる。パチンと音がするとぷくりと血が出始める。
鈴理モノ『異能使用には代償がある。能力値が強いほど大きく、身体的苦痛を伴う者や睡眠、食事など様々だ』
血が出ている手首を響也に差し出す鈴理。
響也は鈴理の手首に口元を近づけ、噛みつく。
鈴理「んっ」
鈴理モノ『響也様はLunoの中でもほぼ無条件で他者に精神干渉ができるR級の異能を持つ。その代償はーー血』
※異能レベル…R、A、B、Cの順
響也「鈴理…まだ大丈夫?」
唇を赤く染めた響也がそろりと鈴理を見る。
鈴理モノ『この代償が…Lunoが悪魔や天使という伝承とされた所以だ』
鈴理「大丈夫です。救出が遅くなってしまい申し訳ありません」
響也「ううん。僕も内緒で出かけてごめんね」
眉を下げ、目を伏せる響也。
鈴理モノ『幼い頃は指先から吸う程度だったけれど、成長した現在は能力値も大きくなり、その分の反動が大きくなって手首になった』
鈴理「いいえ。あの状況では異能をお使いになるのも当然です。気になさらずにお飲みください」
響也「ありがとう、鈴理」
再び、鈴理の手首に口元を寄せる響也。
くらりとする浮遊感に小さく息を詰めて吐く鈴理。
鈴理「…はぁ…」
鈴理モノ『痛くはないけれど採血みたいな、くらりとする微妙な感覚にはいまだに慣れない。でも、なにか対策を考えないと護衛に支障が出ちゃ…』
ぴちゃりと鈴理の手首を舐める響也。
鈴理の肩がびくりと跳ねる。
鈴理「っ! 響也様、飲み終わったらそのままにしてよろしいのですよ?」
響也「そのままにしたら拭うだけでしょ? 鈴理の血がもったいないよ」
にこりと笑う響也に、肩の力が抜ける鈴理。
鈴理「こういうところで年相応の食い意地を張らないでください」
響也「鈴理だからだよ」
ぺろりと自分の唇についた血を舐めとり妖艶に笑う響也。
鈴理「こっ、こら、響也様。はしたないですよ」
ドキッと胸が鳴ったものの、すぐに気を取り直して、小さい子供を窘めるような口調の鈴理。
響也「…ここには鈴理しかいないのだから、これぐらいいいでしょ?」
響也がこてりと可愛らしく首を傾げる。
可愛い響也に弱い鈴理はウッと声を詰まらす。
鈴理モノ『響也様は幼い頃からいろんな大人たちから振り回されてきた。そして常日頃、月詠財閥のご子息として立ち振る舞いを意識されている…』
鈴理「まったく…他所では絶対やってはいけませんからね」
響也「はーい」
ごろりと鈴理の膝に寝転がる響也。
鈴理はパチリと瞳を瞬かせながら、響也の頭を優しく撫でる。
鈴理モノ『だから私は存分に響也様を甘やかせて差し上げたい。そして、ずっとお護りしたい』
◆月詠家本宅・床の間・昼
ーーー数日後
和眞、響也、鈴理が顔を見合わせている。
和眞は不思議そうな顔、響也はニコニコと微笑んでいる。
和眞:響也の父親。和装の穏やか系イケオジ。
鈴理「え、か、和眞様。いま、なんと…おっしゃい、ましたか?」
ひくひくと、唇の端をひくつかせる鈴理。
和眞「? ”響也の護衛として、春から高校に一緒に通うことになったけれど準備は進んでいるかい?”って聞いたんだよ」
鈴理「わた、私が高校に通うぅぅうううう!?!?」
◆本編より先の未来・響也の部屋・夜
手首から血を流す鈴理の腕を取り、頬を擦り寄せる響也。
響也「おとぎ話じゃなく、本当に吸血鬼だったらよかったのに」
鈴理「っ…」※息をのむ
◆現在・ビルが立ち並ぶ中心街・夕方(日暮れ過ぎ)
街中を歩く人混み、街灯の明かりがつきはじめている。
鈴理モノ『悪魔や天使、妖怪などの伝承がおとぎ話だったのは過去のこと。
その多くはーー人智を超えた力を持つ、異能力者”Luno”だったと言われている』
人混みを縫うように走り抜ける鈴理。
鈴理モノ『異能を覚醒する人間は極めて少なく、人口の9割は無能力だ』
◆繁華街前のスクランブル交差点
交差点を多くの人が行き交っている。
鈴理モノ『そのためLunoは長年ひそかに国の発展と平和維持に貢献していた』
◆繁華街の大型ビジョン前
女子高生が大型ビジョンに映し出された美男子を指す。
女子高生1「RAUだ! かっこいいー!」
女子高生2「RAUってたしかLunoなんだよね! ほんと国宝級イケメンすぎる!」
鈴理モノ『現在、異能は恐れられることなく国家公認の存在となっている。数々の功績と容姿に優れている彼らを情報社会となった現代で秘匿できるはずもなく、認めざるを得なかったと言うのが大人の事情だと思う』
◆古いビルの一室
薄暗い室内で椅子に縛られて拘束されている響也。
響也「…」
部屋の奥では薄汚い格好をした男たちが「異能阻害をつけている」「計画は順調だ」などヒソヒソと話し合っている。
◆繁華街の路地裏
足を止め、ビルを見上げる鈴理。
鈴理モノ『だからーー”Lunoがいれば富と栄光を獲られる”なんて愚かな考えをする人間が後を絶たない』
鈴理「すぅ…」
静かに息を吸った鈴理が、地面を強く蹴り、ビルの間を壁をジグザクと走るように上に向かって飛び上がる(パルクールのような動き)
そして最上階まで到着すると、部屋の窓を蹴破る。
◆古いビルの一室
蹴破った窓から、鈴理が部屋の中に入る。
鈴理モノ『Lunoが希少さ故に狙われるのは現代の裏常識だ』
ガラスの破片が飛び散る中、ふわりと降り立つ鈴理。
男1「なっ!?」
男2「くそっ」
男3「こんなガキひとり、やっちまえ」
薄汚い格好をした男たちが鈴理に襲いかかる。
男4「ぐっ」
あっという間に薄汚い男たちを倒す、鈴理。
男たち全員が地面に倒れ込んでいるなか、まだ意識を失っていない男3がうめく。
男3「護衛は…無能力の人間だったはず…」
服についた汚れを払う鈴理がくすりと笑う。
鈴理「えぇ。ただし、忍びの血筋をひく無能力者よ」
◆月詠家の医務部屋・夜
白く清潔感のある部屋。
棚の中から消毒液などの道具を取り出す鈴理。
鈴理「ほんとガキなんて、失礼だわ。今年には19、来年20歳になる立派な淑女なのに」
※現時点では18歳だが、お姉さんアピールをしている
響也「鈴理は小柄だからね」
響也がクスクスと笑う。鈴理、むっと片眉をあげる。
鈴理「響也様、笑い事ではありません。なぜ、相談なくお出かけなされたんですか?」
椅子に座る響也の前に座る鈴理。
縛られて赤くなった響也の手首を優しく治療する鈴理。
響也「どうしても欲しいものがあって」
鈴理「私に言ってくださればお父上の和眞様に内緒で買ってきますよ?」
響也「ふふっ。さすが鈴理だね。僕の欲しいものに検討がついているようだ」
鈴理、響也に褒められ嬉しくなる。すこし頬が赤くなる。
鈴理「…欲しいものが何かまではわかりかねますが。しっかりされている響也様のことです。何も言わずにお出かけされたということは”和眞様などの他の方に知られたくないものを求めていた”と考えるのが当然かと」
響也「そうだね。もう僕も春から高校生になるしね」
パッと顔を上げた鈴理の瞳はキラキラと輝かせている。
鈴理「えぇ、えぇ! 大変喜ばしいことです! こーんなに小さかった響也様が…」
膝下までに手を下ろした後、自分の両頬に手を当てて悦に浸る鈴理。
響也「そんなに小さくはなかったと思うけど」
困ったように笑う響也。
鈴理モノ『響也様は政界にも影響を及ぼす月詠財閥の御曹司である。そして多くのLunoを排出している名家でもある。まさに富と栄光の一石二鳥を狙うことができる稀有な存在。そんな響也様を守るべく、私は専属護衛として仕えている』
◆回想・和室の離れ・昼
鈴理モノ『そう、響也様と出会ったとは10年前のこと』
離れの窓から外を見る響也(5歳)、窓外に立つ鈴理(8歳)が向かい合う。
鈴理モノ『本当に、本当に…可愛らしかった!!』
儚げ美少年姿の響也が目を潤ませ笑う姿を浮かべ、回想に浸る鈴理。
◆現在・月詠家の医務部屋・夜
響也「それでーー父上に…って鈴理ってば、また話を聞いてないんだから」
過去の記憶に浸っている鈴理を楽しそうに眺める響也。
響也「都合がいいから、別にいいけどね」※誰にも聞こえていない。ひとりごと
ニコニコと笑う響也に意識が戻る鈴理。
鈴理「はっ! すみません。幼い響也様が愛らし過ぎて…」
響也「ふふっ。鈴理は本当に幼い僕のことが好きだね。自分のことなのに妬いちゃいそうだ」
鈴理「や、焼く!? まぁデータはクラウドに保存しておりますので、写真を焼くことで今回のお気持ちが晴れるならばやりましょうか。たしか焚き火には心を癒す効果があると言いますし…」※真面目な表情
響也の発言を不思議に思いつつ、響也のためにあれこれ考えはじめる鈴理。
響也「鈴理」
鈴理「はい。ほかになにかございますか?」
顔を上げて返事をする鈴理。
響也「それよりも先に鈴理の血が欲しい」
鈴理「響也様っ!? まさか」
ハッと息をのむ鈴理。
小さくうなずいた響也は眉を下げて困った表情を浮かべる。
響也「捕まりそうになった時に異能を使ってしまったんだ」
◆響也の部屋
畳の上に敷かれた布団の上で向き合う響也と鈴理の2人。
鈴理が袖をまくり手首のリストバンドを外し、採血用穿刺器具を当てる。パチンと音がするとぷくりと血が出始める。
鈴理モノ『異能使用には代償がある。能力値が強いほど大きく、身体的苦痛を伴う者や睡眠、食事など様々だ』
血が出ている手首を響也に差し出す鈴理。
響也は鈴理の手首に口元を近づけ、噛みつく。
鈴理「んっ」
鈴理モノ『響也様はLunoの中でもほぼ無条件で他者に精神干渉ができるR級の異能を持つ。その代償はーー血』
※異能レベル…R、A、B、Cの順
響也「鈴理…まだ大丈夫?」
唇を赤く染めた響也がそろりと鈴理を見る。
鈴理モノ『この代償が…Lunoが悪魔や天使という伝承とされた所以だ』
鈴理「大丈夫です。救出が遅くなってしまい申し訳ありません」
響也「ううん。僕も内緒で出かけてごめんね」
眉を下げ、目を伏せる響也。
鈴理モノ『幼い頃は指先から吸う程度だったけれど、成長した現在は能力値も大きくなり、その分の反動が大きくなって手首になった』
鈴理「いいえ。あの状況では異能をお使いになるのも当然です。気になさらずにお飲みください」
響也「ありがとう、鈴理」
再び、鈴理の手首に口元を寄せる響也。
くらりとする浮遊感に小さく息を詰めて吐く鈴理。
鈴理「…はぁ…」
鈴理モノ『痛くはないけれど採血みたいな、くらりとする微妙な感覚にはいまだに慣れない。でも、なにか対策を考えないと護衛に支障が出ちゃ…』
ぴちゃりと鈴理の手首を舐める響也。
鈴理の肩がびくりと跳ねる。
鈴理「っ! 響也様、飲み終わったらそのままにしてよろしいのですよ?」
響也「そのままにしたら拭うだけでしょ? 鈴理の血がもったいないよ」
にこりと笑う響也に、肩の力が抜ける鈴理。
鈴理「こういうところで年相応の食い意地を張らないでください」
響也「鈴理だからだよ」
ぺろりと自分の唇についた血を舐めとり妖艶に笑う響也。
鈴理「こっ、こら、響也様。はしたないですよ」
ドキッと胸が鳴ったものの、すぐに気を取り直して、小さい子供を窘めるような口調の鈴理。
響也「…ここには鈴理しかいないのだから、これぐらいいいでしょ?」
響也がこてりと可愛らしく首を傾げる。
可愛い響也に弱い鈴理はウッと声を詰まらす。
鈴理モノ『響也様は幼い頃からいろんな大人たちから振り回されてきた。そして常日頃、月詠財閥のご子息として立ち振る舞いを意識されている…』
鈴理「まったく…他所では絶対やってはいけませんからね」
響也「はーい」
ごろりと鈴理の膝に寝転がる響也。
鈴理はパチリと瞳を瞬かせながら、響也の頭を優しく撫でる。
鈴理モノ『だから私は存分に響也様を甘やかせて差し上げたい。そして、ずっとお護りしたい』
◆月詠家本宅・床の間・昼
ーーー数日後
和眞、響也、鈴理が顔を見合わせている。
和眞は不思議そうな顔、響也はニコニコと微笑んでいる。
和眞:響也の父親。和装の穏やか系イケオジ。
鈴理「え、か、和眞様。いま、なんと…おっしゃい、ましたか?」
ひくひくと、唇の端をひくつかせる鈴理。
和眞「? ”響也の護衛として、春から高校に一緒に通うことになったけれど準備は進んでいるかい?”って聞いたんだよ」
鈴理「わた、私が高校に通うぅぅうううう!?!?」


