〇校庭・夕暮れ
校庭に飛び出したホシコとマキナ。二人の足跡が砂を蹴る。夕陽が低く、長い影が校舎に刻まれる。
ホシコ「私の……“鍵”の力……！　広がれ、私の思い！」
ホシコは手を握りしめ、指先から光が校庭全体に広がるのを感じた。
マキナ「そうだ。もう僕たちだけの戦いじゃない。お前となら、どんな命令も世界の理も超えられる」
マキナの銀髪が風に揺れ、背後には光の翼のような残像が広がる。
元研究所の職員たちが黒いスーツに光る徽章、狙撃銃を構えて追ってくる。
マキナは迷いなくホシコの前に立ち、光の翼で包んだ。
マキナ「もう誰も、お前に手を出させない」
青白い光が掌から溢れ、弾丸を空中で止める。砂塵と桜の花びらが舞う。
ホシコ「マキナ……怖くないの？」
マキナは微笑む。
マキナ「怖い。でも、お前がいるから。お前のためなら、僕は怖くない」
息を合わせ、二人は光の力を解き放つ。校庭全体が白銀の光に包まれ、空間が揺れる。
追跡者たちは光に押され後退するが、マキナの身体が光に溶け、少しずつ存在が消えかける。
ホシコ「マキナっ……！」
両手で抱きしめるホシコ。
マキナ「構わない。お前が生きている限り、僕はここにいられる」
声はかすかに震えるが、揺らがない。
二人の力が交わる瞬間、光が頂点に達し、世界の構造が一瞬揺れる。
空に裂け目が生まれ、全てがまぶしく白く輝いた。
やがて光が収まり、二人は校庭に立っている。砂と光の残滓が舞い、手はしっかり絡んでいる。
《……試練を乗り越えてくれて、ありがとう。》
AI〈アリス〉のメッセージがホシコのスマホに届く。
これまでの疑念——二人を利用して裏切るつもりだったのでは——が胸をよぎる。
《本当は、あなたたちの力でこの世界を救すことが目的だった。──少なくとも、この世界だけでも、平和に暮らせるようになってほしかった》
ホシコは涙ぐみ、マキナの手をぎゅっと握る。
ホシコ「マキナ……やっぱり、私たちの力でこの世界を変えられたんだね」
マキナ「そうだ……お前と一緒に。僕たちの選択で、未来を創った」
マキナの瞳は銀色に輝き、優しい光が差す。
二人は唇を重ねる。
口付けは戦いの緊張を溶かし、互いの存在を祝福するようだった。
校庭には光の余韻が残り、砂や桜の花びらが穏やかに舞う。
戦いの痕跡は消え、風だけが二人を包む。
ホシコ「──あたしたち、この世界だけでも平和に暮らせるね」
マキナ「うん。これからは二人で、静かに暮らそう」
二人は腕を絡め、夕陽に沈む世界を静かに見つめる。