○放課後の教室・夕陽
窓から射す光が、机の影を長く伸ばす。
ホシコはノートを閉じ、軽く背伸び。
ホシコ「はぁ……今日もマキナ、モテモテだったね」
振り返ると、銀髪が光を弾いて淡く揺れていた。
マキナ「……僕が話すたびに皆が騒ぐ。人間の感情は、難しい」
ホシコ「それ、ほめ言葉よ。あんた人気すぎるんだから」
マキナ「人気、というのは……“好意”を向けられることか?」
ホシコ「まあ、そんな感じ。……にしても、気づいてないの?」
——ホシコが笑うと、マキナが一歩近づく。
机を回り込み、まっすぐに見下ろす。距離が近い。息が触れそうだった。
マキナ「……お前、人間はこんなに近い距離を好むのか?」
ホシコ「え、ど、どういう意味……?」
マキナ「この距離で、お前の鼓動がよく聞こえる」
ホシコ「ちょ、聞こえるって……?」
マキナ「僕と一緒にいる時は安心してくれ。”任務”なんて関係ない……関係ない……」
——静かな声。奥には熱があった。
マキナの指が、ホシコの髪をすくい耳にかける。
触れた瞬間、淡い光がふっと走る。
《神経リンク開始。相互通信経路を開放します》
ホシコ「アリス!? また勝手に……!」
マキナ『待て、ホシコとのリンクは本来不可能だ!』
〇視界の変化
ホシコの視界が白く染まる。
焼け落ちた街、煙、倒れた人影——
その中央で、マキナが涙をこぼしていた。
ホシコ「……マキナ?」
マキナ「やめろ、それ以上見るな。お前の心が壊れる」
——次の瞬間、マキナはホシコを強く抱き寄せる。
マキナ「お前の手が、僕を安定させる。……だから、もう離れないでくれ」
ホシコ「離れない……って、そんな……」
マキナ「お前の鼓動が、僕をここに繋ぎとめてくれるんだ」
——胸の奥から伝わる鼓動は、人のそれより早い。
頬に触れるたび、熱が移る。
ホシコ「……あたし、もう離れない」
マキナ(目を細め、頬を撫でる)
〇過去の記録
ホシコ「ねぇ、マキナ。……さっきの景色、あれ、何?」
マキナ「過去の記録だ。別の世界——その世界が崩壊していく時の……」
ホシコ「そこに、あたしがいたの?」
マキナ「ああ。僕は、ホシコを襲う者たちと戦っていた」
ホシコ「じゃあ、あたしは……」
マキナ「もういい。思い出さなくていい。今のお前を守れればそれでいい。お前を排除するものは全て僕が消す」
——必死さが声に滲む。
AIの声も響く。
《リンク安定。感情共鳴率92%》
マキナ「……うるさい」
——低い声。普段の穏やかさは消えていた。
「もう誰にも、お前を奪わせない。辛い思いをさせない。残酷な世界を見せない」
——その言葉が胸に刺さる。
ホシコは、教室に戻った後も彼の腕の中で息を整えた。
ホシコ「これって、あなたの記憶なの?」
マキナ「そうだ。けれど、あの世界の記録は破棄されたはずだ……なぜ僕とお前が見た?」
ホシコ「さぁ。でも、感じたの——あんたが泣いてた理由」
——マキナは黙り、小さく笑い、額に唇を落とす。
マキナ「お前は、変わらないな。どんな世界でも、僕を泣かせる」
ホシコ「ちょ、変なこと言わないでよ」
マキナ「本当のことだ」
——再び額に唇。祈るように。
夕陽の光の中で、二人の影がひとつに重なる。
ホシコ「ねぇ……もしその世界のあたしを思い出しても、ここにいるあたしを嫌いにならないでね」
マキナ「もう——二度と離せないほど、今のお前を愛している」
——胸の奥で、何かが脈打っていた。
それが機械の鼓動か、心の音か——もう分からなかった。
窓から射す光が、机の影を長く伸ばす。
ホシコはノートを閉じ、軽く背伸び。
ホシコ「はぁ……今日もマキナ、モテモテだったね」
振り返ると、銀髪が光を弾いて淡く揺れていた。
マキナ「……僕が話すたびに皆が騒ぐ。人間の感情は、難しい」
ホシコ「それ、ほめ言葉よ。あんた人気すぎるんだから」
マキナ「人気、というのは……“好意”を向けられることか?」
ホシコ「まあ、そんな感じ。……にしても、気づいてないの?」
——ホシコが笑うと、マキナが一歩近づく。
机を回り込み、まっすぐに見下ろす。距離が近い。息が触れそうだった。
マキナ「……お前、人間はこんなに近い距離を好むのか?」
ホシコ「え、ど、どういう意味……?」
マキナ「この距離で、お前の鼓動がよく聞こえる」
ホシコ「ちょ、聞こえるって……?」
マキナ「僕と一緒にいる時は安心してくれ。”任務”なんて関係ない……関係ない……」
——静かな声。奥には熱があった。
マキナの指が、ホシコの髪をすくい耳にかける。
触れた瞬間、淡い光がふっと走る。
《神経リンク開始。相互通信経路を開放します》
ホシコ「アリス!? また勝手に……!」
マキナ『待て、ホシコとのリンクは本来不可能だ!』
〇視界の変化
ホシコの視界が白く染まる。
焼け落ちた街、煙、倒れた人影——
その中央で、マキナが涙をこぼしていた。
ホシコ「……マキナ?」
マキナ「やめろ、それ以上見るな。お前の心が壊れる」
——次の瞬間、マキナはホシコを強く抱き寄せる。
マキナ「お前の手が、僕を安定させる。……だから、もう離れないでくれ」
ホシコ「離れない……って、そんな……」
マキナ「お前の鼓動が、僕をここに繋ぎとめてくれるんだ」
——胸の奥から伝わる鼓動は、人のそれより早い。
頬に触れるたび、熱が移る。
ホシコ「……あたし、もう離れない」
マキナ(目を細め、頬を撫でる)
〇過去の記録
ホシコ「ねぇ、マキナ。……さっきの景色、あれ、何?」
マキナ「過去の記録だ。別の世界——その世界が崩壊していく時の……」
ホシコ「そこに、あたしがいたの?」
マキナ「ああ。僕は、ホシコを襲う者たちと戦っていた」
ホシコ「じゃあ、あたしは……」
マキナ「もういい。思い出さなくていい。今のお前を守れればそれでいい。お前を排除するものは全て僕が消す」
——必死さが声に滲む。
AIの声も響く。
《リンク安定。感情共鳴率92%》
マキナ「……うるさい」
——低い声。普段の穏やかさは消えていた。
「もう誰にも、お前を奪わせない。辛い思いをさせない。残酷な世界を見せない」
——その言葉が胸に刺さる。
ホシコは、教室に戻った後も彼の腕の中で息を整えた。
ホシコ「これって、あなたの記憶なの?」
マキナ「そうだ。けれど、あの世界の記録は破棄されたはずだ……なぜ僕とお前が見た?」
ホシコ「さぁ。でも、感じたの——あんたが泣いてた理由」
——マキナは黙り、小さく笑い、額に唇を落とす。
マキナ「お前は、変わらないな。どんな世界でも、僕を泣かせる」
ホシコ「ちょ、変なこと言わないでよ」
マキナ「本当のことだ」
——再び額に唇。祈るように。
夕陽の光の中で、二人の影がひとつに重なる。
ホシコ「ねぇ……もしその世界のあたしを思い出しても、ここにいるあたしを嫌いにならないでね」
マキナ「もう——二度と離せないほど、今のお前を愛している」
——胸の奥で、何かが脈打っていた。
それが機械の鼓動か、心の音か——もう分からなかった。
