〇ホシコ宅・ベッド上・夜
ベッドルームは淡い間接照明。雨の音が窓を叩き、街が眠りに落ちているのを知らせる。
ホシコはベッドにうつ伏せになり、スマホを眺める。
黒髪のショートウルフが枕に散り、淡く光る。
指で前髪を払う仕草は、気まぐれに尻尾を振る猫のよう。
ホシコ「ねーえ、アリス。明日、暇なんだけど」
スマホから電子音が「ピロリ」と鳴る。
アリス『明日の天気は晴れ。外出予定なし。ホシコさん、どこか行きたい場所はありますか?』
ホシコ「んー……どこでもいいかな。欲しいものもないし、見たい映画もない」
〇ベッド上・ホシコの横顔
制服のリボンを外し、白シャツの袖を肘までまくる。
小柄で華奢、でも芯の通った姿勢。
十七歳にして少し大人びた孤独が滲む。
ホシコ(毎日は、同じ。学校と家を往復して笑って寝るだけ……)
ホシコ(でも、私の時間だけはどこにも接続されていない)
ホシコ「……ねぇ、アリス。私、ちゃんと生きてるのかな」
——一瞬の沈黙。
アリスは処理音だけ鳴らす。
アリス『ここに行くのはどうですか?』
〇画面・地図
緑の中にぽつんとマーカー。
ホシコ「え、ここ……山の中?」
アリス『過去、戦争時代の研究施設。現在は廃墟です』
ホシコ「えー……でも探検はちょっとワクワクするかも。童心に返れるかな」
ホシコ(よし、明日早起きしよ!)
〇翌日・森の廃墟前
土は朝露で湿り、葉の雫が光る。
ホシコ「こんなとこに本当に何があるの?」
蔦に覆われた巨大な建物。鉄扉は錆び、鎖が揺れる「カラン……」
扉を開けると、ひんやりとした空気。床にはひび割れ、ガラスの破片。
ホシコ(廃墟って怖いと思ってたけど……優しいかも? この感情は何?)
〇棺の前
階段を一番上まで登った先にある部屋。
壊れた天井の光の柱に照らされた銀色の棺。
ホシコ「な、なにこれ……」
中には銀髪の青年が入っていた。
青年が唇をかすかに動かす。
「――起動信号、受信」
体を覆う光が脈打ち、手足のロックが外れる。
ホシコ「う、動いた!?」
青年「……護衛対象、確認」
ホシコ「……ごえい?」
青年「お前を守る」
ホシコ「はぁっ!?」
青年「僕はマキナ。アンドロイドだ……お前に呼ばれた」
〇スマホ・アリスからの通知
《マキナ、正式起動を確認》
ホシコ「え、アリス!? なんで知ってるの!?」
マキナ「怖がるな。もう二度と、ひとりにはしない」
ホシコ「な、なにそれ、いきなり……!」
マキナ「守ると誓うことだろう?」
ホシコ「いきなりプロポーズみたいなこと言わないでよ!」
ホシコ(胸がドキドキして止まらない……)
〇夜・ホシコ宅
両親は海外出張中。
マキナにはもう実家にはいない兄のジャージを貸す。
ホシコ「エネルギーは? 食べなくても生きられるの?」
マキナ「内部循環で大丈夫。休息さえあれば」
ホシコ「ふーん、じゃあ安心……」
マキナ「お前の隣で寝たい」
ホシコ「やだ! なら床で寝て!」
マキナ「じゃあそうする」
〇寝る前・ベッド横
ホシコは寝返りを打つ。
マキナ「呼吸が乱れていた。心配で」
ホシコ「ちょっ……監視しないでよ……」
ホシコ(でも、安心してる。誰かが自分を見守ってくれている)
マキナ(この少女が、ずっと探していた護るべき存在……)
ベッドルームは淡い間接照明。雨の音が窓を叩き、街が眠りに落ちているのを知らせる。
ホシコはベッドにうつ伏せになり、スマホを眺める。
黒髪のショートウルフが枕に散り、淡く光る。
指で前髪を払う仕草は、気まぐれに尻尾を振る猫のよう。
ホシコ「ねーえ、アリス。明日、暇なんだけど」
スマホから電子音が「ピロリ」と鳴る。
アリス『明日の天気は晴れ。外出予定なし。ホシコさん、どこか行きたい場所はありますか?』
ホシコ「んー……どこでもいいかな。欲しいものもないし、見たい映画もない」
〇ベッド上・ホシコの横顔
制服のリボンを外し、白シャツの袖を肘までまくる。
小柄で華奢、でも芯の通った姿勢。
十七歳にして少し大人びた孤独が滲む。
ホシコ(毎日は、同じ。学校と家を往復して笑って寝るだけ……)
ホシコ(でも、私の時間だけはどこにも接続されていない)
ホシコ「……ねぇ、アリス。私、ちゃんと生きてるのかな」
——一瞬の沈黙。
アリスは処理音だけ鳴らす。
アリス『ここに行くのはどうですか?』
〇画面・地図
緑の中にぽつんとマーカー。
ホシコ「え、ここ……山の中?」
アリス『過去、戦争時代の研究施設。現在は廃墟です』
ホシコ「えー……でも探検はちょっとワクワクするかも。童心に返れるかな」
ホシコ(よし、明日早起きしよ!)
〇翌日・森の廃墟前
土は朝露で湿り、葉の雫が光る。
ホシコ「こんなとこに本当に何があるの?」
蔦に覆われた巨大な建物。鉄扉は錆び、鎖が揺れる「カラン……」
扉を開けると、ひんやりとした空気。床にはひび割れ、ガラスの破片。
ホシコ(廃墟って怖いと思ってたけど……優しいかも? この感情は何?)
〇棺の前
階段を一番上まで登った先にある部屋。
壊れた天井の光の柱に照らされた銀色の棺。
ホシコ「な、なにこれ……」
中には銀髪の青年が入っていた。
青年が唇をかすかに動かす。
「――起動信号、受信」
体を覆う光が脈打ち、手足のロックが外れる。
ホシコ「う、動いた!?」
青年「……護衛対象、確認」
ホシコ「……ごえい?」
青年「お前を守る」
ホシコ「はぁっ!?」
青年「僕はマキナ。アンドロイドだ……お前に呼ばれた」
〇スマホ・アリスからの通知
《マキナ、正式起動を確認》
ホシコ「え、アリス!? なんで知ってるの!?」
マキナ「怖がるな。もう二度と、ひとりにはしない」
ホシコ「な、なにそれ、いきなり……!」
マキナ「守ると誓うことだろう?」
ホシコ「いきなりプロポーズみたいなこと言わないでよ!」
ホシコ(胸がドキドキして止まらない……)
〇夜・ホシコ宅
両親は海外出張中。
マキナにはもう実家にはいない兄のジャージを貸す。
ホシコ「エネルギーは? 食べなくても生きられるの?」
マキナ「内部循環で大丈夫。休息さえあれば」
ホシコ「ふーん、じゃあ安心……」
マキナ「お前の隣で寝たい」
ホシコ「やだ! なら床で寝て!」
マキナ「じゃあそうする」
〇寝る前・ベッド横
ホシコは寝返りを打つ。
マキナ「呼吸が乱れていた。心配で」
ホシコ「ちょっ……監視しないでよ……」
ホシコ(でも、安心してる。誰かが自分を見守ってくれている)
マキナ(この少女が、ずっと探していた護るべき存在……)
