「ランスロット!」

 振り返ると場違いなオーラを放つ、麗しの美青年が走ってきた。相変わらず美形がずば抜けていて腹が立つ。

「お前、どれだけ待ったと思ってるんだ!陛下がお前を助けるためにどれだけ……!っ……良かった……本当に良かった……!」
「ありがとう、ランスロット。陛下とお城を守ってくれて。」

 魔獣にされていたくせに、余裕があってムカつく。ランスロットはロシュフォールをどついた。

「いてっ!なにすんだよ!」
「知るかっ!」

 ランスロットはロシュフォールを置いて歩き出した。ロシュフォールは目の前に広がる美しい庭園に目を奪われて足を止めた。

「ランスロット、この庭園はお前が作ったのか?」
「まさか。我が皇妃、セレーヌ様が造られた自慢の庭園だ。」

「俺たちが元に戻れたのはセレーヌ様のおかげだ。お前が連れてきてくれたんだろ?」
「あぁ。今では陛下もご執心の様子だし、本当に良かったよ。」

「セレーヌ様は魔獣の俺たちにもお優しくて…………はっ!」

 ロシュフォールは顔を赤くして口を押さえている。ランスロットは怪訝な顔をした。

「何を考えてるんだ。セレーヌ様は皇妃様だぞ?」
「わかってるよ。ただ、セレーヌ様に撫でられたことを思い出しただけだ。セレーヌ様に撫でられると、なぜか眠くなってだな……ははは。」

 ランスロットは血の気が引いた。そんなことをアルフォンスの前で言ったら終わりだ。

「陛下の前でセレーヌ様の話をするなよ?」
「なぜだ?」
「お前に嫉妬して魔獣になってしまわれたことがある。」

「陛下が俺に嫉妬……?陛下が俺を認めてくださっているということか!?」

 ランスロットはため息をついた。空気が読めない天然。これがロシュフォールの悪いところだ。

「セレーヌ様とできるだけ関わるな。もう魔獣は見たくない。」
「俺はもう一度見たい。陛下が魔獣になられた御姿は、とてつもなくカッコよかった。」

「やめてくれ。あれならまだロシュフォールの方がマシだ。」
「俺が魔獣だった時は……っ……ふふ。」

「またセレーヌ様のことを考えたな!?」
「仕方ないだろ、すごく気持ちよかったんだから。」

「陛下の前では絶対に思い出すな!」

 ロシュフォールは楽しそうに笑っている。ランスロットは嫌な予感しかしなかった。