ランスロットは、森の入口に立ち両手を組んで祈っていた。

（頼む……！もう終わってくれ……！）

　元々魔力が強く、多くの魔力を使いこなすアルフォンスでも、ルシアによって魔獣に変えられた人を元に戻すことはできなかった。国外の魔力使いに協力を求めるように言っても聞く耳を持たず、アルフォンスはひたすら身を削って魔力を習得していた。

　魔力は難易度が高くなるほど、心身に与える影響が大きくなる。傷だらけになることはまだマシで、血だらけになって気を失うことが続いた時は、ロシュフォールを助ける前にアルフォンスが死んでしまうのではないかと思った。もうやめてくれと頼んだが、アルフォンスはやめなかった。

　そんな思いをして魔力を習得してもロシュフォールたちを元に戻すことはできなかった。そんな時、ルシアに女を連れて来いと言われた。セレーヌを見つけたのは偶然だったが、セレーヌはルシアから悪の精霊になった理由を聞きだしてくれた。

（絶対に大丈夫だ。全部解決する……！）

　ランスロットが手に力を込めると、森の奥からざわざわとした声と大地を踏み締める足音が聞こえてきた。徐々に近づいてくる懐かしい顔の面々に、ランスロットの目に涙が浮かんだ。

「終わった……やっと終わったんだ……！」

　ランスロットは膝から崩れ落ちて涙を拭った。森から出てきた使用人たちは、泣いているランスロットを見るなり、心配して駆け寄ってきた。使用人たちは魔獣に変えられたことを覚えておらず、キャンプでもしていたのかなどと楽しそうに話している。

「早く持ち場へ戻れ。」

　ランスロットは、仕事が忙しくてキャンプに行けなかったから悲しくて泣いているだけだと言って笑った。使用人たちが城へ戻っていくと、暗かった城に明かりが灯り、心の中がじんわりと暖かくなった。