聖なる泉は静かで魔力も落ち着いている。レオニードは美しい泉を呆然と眺めた。
「こんなに綺麗だとは思わなかった。本当にルシアは悪の精霊なのか?」
「この泉が美しく保たれているのはセレーヌのおかげだ。セレーヌがルシアに会ってから、泉の状態が明確に変わった。」
「そうだったのですか?知りませんでした。」
「お前と話せて嬉しかったのだろうな。」
ルシアの気持ちを少しでも癒せたのなら嬉しい。
「レオニード、精霊は悪の精霊に触れたら消える。忘れるなよ?」
「……あぁ。」
水晶玉がパチンと消えて、レオニードは羽を羽ばたかせた。
「セレーヌ、泉へ向かって呼びかけてみろ。」
「わかりました。」
泉の中のルシアは美しい精霊だけど、外に出るとルシアは悪の精霊の姿になってしまう。レオニードは初めて目にする。
「レオニード、今のルシアは悪の精霊。見た目だけじゃなくて、声や話し方も違うと思うわ。」
「わかってる。大丈夫だ。」
レオニードは決意を固めて泉を見ている。私は泉の淵に立つと、すーっと息を吸い込んだ。
「ルシア、外に出てきてくれない?」
私の声を攫うように風が吹いてゴゴゴと地鳴りがした。そして、凄まじい水飛沫と共に悪の精霊ルシアは姿を現した。
「……何の用?」
低い声が周囲を圧倒する。黒い影に覆われているのがルシアだとわかっていても、この姿は怖い。でも怯んではいけない。
「ルシア、あのね……あなたに会わせたい人がいるの。」
隣を見てもレオニードの姿がない。振り返ると、レオニードは背中の後ろで体を震わせていた。
「外へ出たら私はこの姿になるって言ったでしょ?用がないなら帰って。セレーヌを傷つけたくないの。あなたまで魔獣に変えてしまうようなことがあったら……」
「ルシア……声が……」
見た目は恐ろしいままだけど、ルシアの声は泉の中で聞いた綺麗な声に変わっていく。ルシアの声を聞いて、背中に隠れていたレオニードは恐る恐る顔を出した。
「レオニード、ルシアは私だってわかってくれた。あなたの声もちゃんと届くわ。がんばって。」
レオニードはぐっと手を握りしめて、ふわりと舞い上がった。
「ルシア……!」
レオニードの姿を見たルシアの姿が激しく揺らいだ。
「あなた……レオニード……なの……?」
「ごめん……!急にここへ来られなくなって……」
「どうして来たの!?今の私は悪の精霊なのよ?消えちゃうかもしれないのに!」
「ずっと謝りたかったんだ!ここへ来なくなったのは、ルシアが嫌いになったわけじゃない!練習をサボり過ぎて、ここへ来る魔力が無くなっただけなんだ!ごめん……本当にごめん!」
ルシアを纏う真っ黒い影はうねるように動いて強い風が巻き起こった。
「なによ今更……!急に1人にされた私の気持ちなんてわからないでしょ?すごく寂しかったの。誰も来なくなって、1人ぼっちになって、それで……」
「もう1人にしない!皇帝陛下に浄化の魔力を教わったんだ。俺はルシアと一緒に泉を守るって決めた。」
レオニードは泉に向かって魔力を放った。しばらくすると、白い湯気とともに金色の粒が舞い上がりはじめた。
「すごいわ!レオニード!」
「ちょっとはできるようになったのかな……へへっ。」
レオニードは恥ずかしそうに頭を掻くと、ルシアの正面まで飛び上がった。
「ルシア、これからはずっと一緒にいよう!最初見た時は怖かったけど、ルシアはルシアだ。俺にはちゃんと見えてるから。」
「レオニード……」
黒い影の中で怪しく光っていた目のような赤い光は静かに消え、黒い影はゆらゆらと揺れている。固唾を飲んで見守っていると、影の内側から眩しい光の筋が四方へ向かって放たれた。
「っ、ルシア……!」
「レオニード!行っちゃだめ!」
レオニードがルシアの影に消えた瞬間、大きな爆発音と共に目を開けていられないほどの強い光が視界を覆った──
「こんなに綺麗だとは思わなかった。本当にルシアは悪の精霊なのか?」
「この泉が美しく保たれているのはセレーヌのおかげだ。セレーヌがルシアに会ってから、泉の状態が明確に変わった。」
「そうだったのですか?知りませんでした。」
「お前と話せて嬉しかったのだろうな。」
ルシアの気持ちを少しでも癒せたのなら嬉しい。
「レオニード、精霊は悪の精霊に触れたら消える。忘れるなよ?」
「……あぁ。」
水晶玉がパチンと消えて、レオニードは羽を羽ばたかせた。
「セレーヌ、泉へ向かって呼びかけてみろ。」
「わかりました。」
泉の中のルシアは美しい精霊だけど、外に出るとルシアは悪の精霊の姿になってしまう。レオニードは初めて目にする。
「レオニード、今のルシアは悪の精霊。見た目だけじゃなくて、声や話し方も違うと思うわ。」
「わかってる。大丈夫だ。」
レオニードは決意を固めて泉を見ている。私は泉の淵に立つと、すーっと息を吸い込んだ。
「ルシア、外に出てきてくれない?」
私の声を攫うように風が吹いてゴゴゴと地鳴りがした。そして、凄まじい水飛沫と共に悪の精霊ルシアは姿を現した。
「……何の用?」
低い声が周囲を圧倒する。黒い影に覆われているのがルシアだとわかっていても、この姿は怖い。でも怯んではいけない。
「ルシア、あのね……あなたに会わせたい人がいるの。」
隣を見てもレオニードの姿がない。振り返ると、レオニードは背中の後ろで体を震わせていた。
「外へ出たら私はこの姿になるって言ったでしょ?用がないなら帰って。セレーヌを傷つけたくないの。あなたまで魔獣に変えてしまうようなことがあったら……」
「ルシア……声が……」
見た目は恐ろしいままだけど、ルシアの声は泉の中で聞いた綺麗な声に変わっていく。ルシアの声を聞いて、背中に隠れていたレオニードは恐る恐る顔を出した。
「レオニード、ルシアは私だってわかってくれた。あなたの声もちゃんと届くわ。がんばって。」
レオニードはぐっと手を握りしめて、ふわりと舞い上がった。
「ルシア……!」
レオニードの姿を見たルシアの姿が激しく揺らいだ。
「あなた……レオニード……なの……?」
「ごめん……!急にここへ来られなくなって……」
「どうして来たの!?今の私は悪の精霊なのよ?消えちゃうかもしれないのに!」
「ずっと謝りたかったんだ!ここへ来なくなったのは、ルシアが嫌いになったわけじゃない!練習をサボり過ぎて、ここへ来る魔力が無くなっただけなんだ!ごめん……本当にごめん!」
ルシアを纏う真っ黒い影はうねるように動いて強い風が巻き起こった。
「なによ今更……!急に1人にされた私の気持ちなんてわからないでしょ?すごく寂しかったの。誰も来なくなって、1人ぼっちになって、それで……」
「もう1人にしない!皇帝陛下に浄化の魔力を教わったんだ。俺はルシアと一緒に泉を守るって決めた。」
レオニードは泉に向かって魔力を放った。しばらくすると、白い湯気とともに金色の粒が舞い上がりはじめた。
「すごいわ!レオニード!」
「ちょっとはできるようになったのかな……へへっ。」
レオニードは恥ずかしそうに頭を掻くと、ルシアの正面まで飛び上がった。
「ルシア、これからはずっと一緒にいよう!最初見た時は怖かったけど、ルシアはルシアだ。俺にはちゃんと見えてるから。」
「レオニード……」
黒い影の中で怪しく光っていた目のような赤い光は静かに消え、黒い影はゆらゆらと揺れている。固唾を飲んで見守っていると、影の内側から眩しい光の筋が四方へ向かって放たれた。
「っ、ルシア……!」
「レオニード!行っちゃだめ!」
レオニードがルシアの影に消えた瞬間、大きな爆発音と共に目を開けていられないほどの強い光が視界を覆った──



