森へ入るとすぐにロシュフォールが駆けてきた。ロシュフォールは興味津々でレオニードを見ている。

「レオニード、こいつは側近のロシュフォール。ルシアが魔獣に変えた人間だ。」

 皇帝陛下が淡々と告げるとレオニードは水晶玉の中で立ち上がった。

「お前か……ルシアをそそのかしたのは!」
「え?」

 ロシュフォールは訳がわからず首を傾げている。

「ルシアはずっとロシュフォール、ロシュフォールって言ってたんだ!」
「レオニード、落ち着いて。ロシュフォールはそんなことしてないから。」

「ははは。」

 敵意をむき出しにするレオニードを見て、皇帝陛下は楽しそうに笑っている。

「ここから出してくれ!俺はこいつと決闘する!」
「やめておけ。ロシュフォールの魔力は俺と同等だ。剣の腕は俺より上かもな。」

「くそっ!なんでルシアはこんな奴を好きになるんだよ!」

「レオニード、ルシアはお揃いのブレスレットを持ってるわ。今もちゃんとレオニードのことを思ってるから、ね?」

 セレーヌが必死にレオニードをなだめているとき、ロシュフォールは目を潤ませて皇帝陛下を見ていた。

(陛下が、俺のことを褒めてくださった!あぁ、嬉しい!こんなお言葉を頂けるのなら、俺は魔獣のままでもいいかもしれない!)

 ロシュフォールはぶんぶん尻尾を振りながらアルフォンスの足にまとわりついていた。