扉を叩く音が聞こえて、私は急いで部屋を出た。

「準備は終わったか?」
「はい!レオニードは大丈夫ですか?」

 レオニードは水晶玉の中に入っている。体を横たわらせて休んでいるようだ。

「お城の掃除をしたんだもの。疲れたわよね……」

 レオニードはチラリと視線をこちらへ向けて、人差し指を唇に当てた。

(そうよね、静かにしないと……)

 慌てて口をつぐむと、皇帝陛下は私の頭に手を乗せて優しく髪を撫でた。驚いて顔を向けると、瞳の奥で青い炎が揺らいでいる気がした。

「行こう、セレーヌ。」
「はい……」

 それとなく腕を差し出されて、私は皇帝陛下のエスコートで森へ向かった。

(きっとレオニードは話しかけるなって教えてくれたんだわ。)

 私は皇帝陛下に気づかれないようにレオニードの方を見ながら、ありがとうと心の中でつぶやいた。