ランスロットは不安気な表情で執務室を見回した。廊下からは激しい音が鳴り響き、ときどき城が揺れている。

「陛下、何が起きているのですか?城は壊れませんか?」
「気にするな。そのうち落ち着く。」

 アルフォンスが言った通り、城を破壊するような大きな音は徐々におさまっていった。

「こちらの書類をお願いします。」
「あぁ。」

 気の抜けた返事をしたアルフォンスは、仕事そっちのけで鏡を見ている。

(気味が悪いんだよな。好きな人を見てる顔じゃないっていうか……)

「陛下、お顔が怖すぎるのですが。」
「ははは、仕方ない。俺は自分がこんな気持ちになるとは知らなかった。」

 アルフォンスは鏡を持って立ち上がると、愛おし気に鏡を撫でた。

(だからその顔はやめて!怖いんだよ!)

 ランスロットが顔を引きつらせながら書類をまとめていると、突然窓の外が明るくなった。見ると、星が異常なまでに輝いている。このおかしな星空はアルフォンスの心の影響に違いない。それだけセレーヌのことを思っているということだ。それ自体はとても良いことだけれど──

「監視はほどほどにしてください。」
「どこかへ行っては困るだろ?」

「セレーヌ様は、どこにも行きませんよ。」
「……」

(あの顔はぜったい閉じ込めてるな。)

 またセレーヌの部屋に鍵をかけて、外へ出られないようにしているに違いない。いよいよまずいことになる。セレーヌに監禁していることが知られたら一大事だ。

「少し出てきます。」

 ランスロットは書類を綺麗に並べ終えると、静かに執務室を後にした。