「ロシュフォールにそばにいて欲しいって思ったから悪の精霊になったの?」
「ロシュフォールさんが結婚するって聞いてショックだったの。」
「結婚?」
「そう。許嫁とそのうち結婚するって話を聞いたら寂しくなっちゃって。私は1人なんだなと思ったら魔力がどんどん上昇して止められなくなったの。そしたら悪の精霊に……」

 ルシアはブレスレットをさすっている。

「ルシア、ちょっと酷いことを聞くかもしれないけど……」
「?」

「まだ好きなのよね?ルシアを捨てたっていう精霊のこと。」
「っ……そんなことないわ。」

「でもそのブレスレットは、彼にもらった物かお揃いの物じゃない?」
「どうしてわかるの?」
「水色だから。ルシアならピンクを選ぶと思って。」

 ルシアは俯いてじっとブレスレットを見つめている。きっと彼との思い出が詰まっているのだろう。

「どうして捨てられたと思ってるの?」
「私はこの泉を守る精霊だから、この場所を離れられないの。会いに来てもらうしかない。だけど、急に彼が会いに来なくなったの。」

「それだけ?」
「それだけって、結構大事でしょ?会いに来なくなっちゃったんだから。」

「でも来られなくなった理由があるかもしれないわよ?」
「どんなこと?」

「うーん……特殊な魔力を習得している時は集中するために外界と接触を避けたりするし……」
「それは絶対ない。彼は魔力を使えないもの。」

「そうなの?」
「精霊は浄化の魔力が得意なんだけど、彼は使えなかった。」

「浄化の魔力って難しいのよ?」
「人間とは違うわよ。」

「そうなんだ。すごいのね、精霊って。」
「セレーヌもたくさん魔力を使えるじゃない。」
「私はすごく苦労したから……」

 ルシアと話していると精霊であることを忘れそうになる。私はルシアの部屋で楽しく会話を楽しんでいた。