「今の……承諾してくださったということですよね?」

 私は向かいに座るランスロットさんの顔を見た。

「そのようです。うまくいって良かったですね。」
「はい。まずは一歩前進です。」

(ふふふ。あんな陛下を見たのは初めてだ。)

 ランスロットは顔が緩みそうになるのを必死に我慢していた。

「問題はロシュフォールですね。デートというのに、のこのこついてきそうです。空気を読んで欲しいですよ、まったく。」

 ロシュフォールはこういうことにはめっぽう疎い。ランスロットはロシュフォールがデートの邪魔をすることを想像して怪訝な顔をした。

「ランスロットさん、陛下はどんなものがお好きなのですか?」
「おや、陛下に興味がおありで?」

「ランスロットさんみたいに、クッキーが好きとかわかりやすいものがあれば、お礼ができるかなと思ったんです。」
「デートがお礼ですから大丈夫ですよ。さっきの陛下のお姿を見ましたよね?照れて顔が上げられないまま逃げましたからね。転移の魔力というのは、便利でいいですね~」

 ランスロットさんはいつの間にか自分の紅茶も入れて飲んでいる。

「陛下にとってセレーヌ様の存在こそが癒しなのです。いつまでもヴァルドラードにいてください。」
「そうなったらいいなぁ……」

 ロシュフォールたちが人間に戻り、ルシアも精霊に戻ったら、今とは違うヴァルドラードが見られるかもしれない。そのときも私はアルドラードにいられるだろうか。

「では、私は恥ずかしがり屋の陛下のところへ戻ります。」
「ありがとうございました、ランスロットさん。」

「いえいえ、こちらこそ。」

 ランスロットさんを見送って部屋に戻ると、花瓶の花が満開になっていた。