目を開けた私は、体を起こそうとしても起き上がれなかった。自室のベッドの上にいることがわかったけれど、どうやって戻ってきたのかわからない。

「あの魔獣は……」

 すると、部屋の扉が叩かれてランスロットさんがやってきた。

「セレーヌ様、お加減はいかがですか?」
「ランスロットさん……私は……」

「魔力を使いすぎてしまわれたようですよ。」
「魔力……そうですか。」

「ご安心ください。セレーヌ様の魔力は陛下がく……魔力をお送りしました。」
「陛下の魔力は大丈夫なのですか?」

「そんなお体で陛下のご心配をなさるなんて、なんとお優しい皇妃様なのでしょうか。」
「たくさん魔力を使うと疲れるって言ってたんです……」

「へぇ~そんなこと初めて聞きました。気にしないでください。陛下の魔力は無限です。」
「あの魔獣は助かったのでしょうか。」

「マリウスですか?勝手に遊びに行かないようにロシュフォールが見張っているそうです。」
「そうですか、良かった……」

 助けられないと思った。でもあの魔獣は生きてる。

「体が動かせるようになったら、陛下にお礼を言いに行きますね。」
「お礼のデートでもしちゃいますか?」

 ランスロットさんはニコニコと微笑んでいる。

「陛下が良いならしますけど?」

 魔力をわけてもらったのだ。何かしらのお礼はしたい。

「では、セレーヌ様がデートをしたがっているとお伝えいたしますね。」
「それは語弊があります。ちゃんと正しい意味で伝えてください!」

「は~い。では、ゆっくりお休みください。」

 ランスロットさんが部屋を出て行くと、部屋はしんと静まり返った。

「ありがとうございます、陛下。」

 私はそっと目を閉じた。